30代「東芝」社員の転職日記 “就職時は勝ち組中の勝ち組だった”“感覚は完全に麻痺している”

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■面談で撃沈

――東芝の有価証券報告書によれば、昨年3月末時点の平均年収は約827万円。サラリーマンのそれが420万円だと考えれば、ボーナスカットで年収が100万円近く減ったとはいえ、未だに“勝ち組”だ。

2月25日・土曜日 惨敗。己の無力を感じる。この十数年間、自分は何をしてきたのか。紳士的なリクルーターは見た目と違って、矢継ぎ早に厳しい質問を投げかけて来る。“具体的にどんな形で貢献できるのか”、“どんな資格を持っているのか”、“これまで築いた人脈は”。相手が納得するような返答をできず。撃沈される。恐らく、あのリクルーターと二度と会うことはないし、あの会社から転職のオファーが来ることもないだろう。自分も、東芝という“大樹”に寄りかかっていただけではないのか。職場で“窓際族”と揶揄されている先輩社員と、自分は何も違わないのでは……。〉

3月3日・金曜日 後輩とランチをした時、気になることを聞く。格下だと馬鹿にしていたパナソニックなどが、転職仲介会社を通してうちの社員をリクルートしているのだという。しかも、技術職だけでなく“文系社員”も対象。初耳だ。なぜ、自分の耳に入らなかったのだろうか。自分も早めに手を打たねば。〉

――東芝は3月14日、1カ月間延期していた16年度第3四半期決算の発表を再び延期した。先に延期の原因になったWH幹部の“不適切な圧力”について、監査法人が“対応が不十分”と判断して、決算を承認しなかったからだ。東芝社内では2月14日を“血のバレンタインデー”、この日を“崩壊のホワイトデー”と呼んでいるとか。

3月24日・金曜日 決算発表の再延期を聞いても、冷静だった。もう、大抵のことでは驚かないが、これにはビックリした。旧村上ファンドの残党が、うちの筆頭株主になるというのだ。上司の説明では、“純投資なので株価が上がれば、売るから大丈夫だ”と。確かに株価が上がれば、ありがたい。自分が持っている自社株も、買った時の半額ほどになっている。だけど、彼らは“ハゲタカ”のようなもの。そんな会社が筆頭株主になって、“大丈夫だ”といわれてもね。〉

3月30日・木曜日 綱川社長が3月29日に記者会見を開きWHの破産法申請と同時に、その処理で赤字が最大1兆100億円になると発表。2年前だったらビックリしたかもしれないが、これまで数々の問題が起きて数千億円単位の損失などが明らかになったからだろう。危急存亡のときに立たされても、もはや驚愕しなくなった自分の感覚は、完全に麻痺している。

 臨時株主総会が本日開催。大荒れだったという。株主たちの逆鱗に触れたのは原発事業の責任者だった志賀前会長の“病欠”。株主の怒りは当然だ。不祥事が発覚すると、会長や社長が急病になるのはなぜだろうか。無責任のひと言に尽きる。

 転職活動は必ずしも順調とはいえないが、一筋の光明も。同業他社から面談のオファー。履歴書の“職歴”をイチから見直し修正した成果が出た。前回の“惨敗”を教訓にリクルーターとの想定問答を練りに練る。キツイ質問にも笑顔を絶やさず、ハキハキ答えることを心がけよう。面談日は決まった。後は、“チャレンジ”するだけだ。〉

特集「『合コンにも呼ばれない……』『見合い写真も来なくなった』 『東芝』30代社員のトホホな『転職活動日記』」より

週刊新潮 2017年4月13日号掲載

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