容姿の美しさを求めるべき?――塩野七生が答える「指導者」という存在

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■ライヴァル同士の夕食

古代ギリシアの歴史年表

――ペリクレスと、そのライヴァルであるスパルタの王アルキダモスは、個人的な親交があった可能性が高いですが、実際にどんなことを語らい合っていたのでしょうか。拠って立つ国やそこでの育ち方には大きなちがいのあったはずの2人ですが、まったくの同世代として、またペルシアの脅威を間近に感じる指導者として、相通ずるところがあったのでしょうか。

塩野「歴史物語の執筆中にしばしば、登場人物の心理にわけ入るか、それともそこまではしないで読者の想像にまかせるか、という問題に突き当たります。

 小説を書いているわけではないので、私の場合はほとんどが後者になる。しかもこのやり方は、書く私の側からの、書かれる男たちへの敬意、と言うか彼らを尊重する思いからでもあるのです。

 スパルタの王アルキダモスとアテネの第一人者ペリクレスは、背負う国はライヴァル同士でも、同年配で成熟したオトナであることでは共通している。

 この部分を読む読者には、トヨタの社長とホンダの社長が2人だけで一晩夕食を共にしながら胸襟を開いて語り合うとしたら、とでも想像しながら読んでくれたらと思います。御二方ともお会いしたことはない私ですが、きっと、同席者がいなかったのは残念と思うくらいに刺激的で、それでいて愉快な夕になったと思いますよ」

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(6)へつづく

特別寄稿「塩野七生『ギリシア人の物語II』刊行! 後編 もし歴史に『イフ』があったら」より

週刊新潮 2017年4月13日号掲載

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