容姿の美しさを求めるべき?――塩野七生が答える「指導者」という存在
■塩野七生『ギリシア人の物語II』刊行!「トランプ時代」の日本の針路(5)
作家・塩野七生さん
就任以来のドナルド・トランプ大統領の振る舞いは、「指導者」のあり方について、改めて我々に考えさせる。『ギリシア人の物語II』の第二部を「ペリクレス(アテネ黄金期の指導者)以後」と題した塩野七生さんは、この特別な存在をどう考えているのだろうか。
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――第2巻を読んで驚いたのですが、ギリシア人はローマ人とは異なり、為政者に容姿の美しさを求めました。容姿の美しさを神に愛されている証しと考えたからだと作中では説明されています。結果としてローマとギリシアでは、大きな差が出ました。現代を生きるわれわれは、指導者に容姿の美しさを求めるべきでしょうか?
塩野「指導者に容姿の『美』を求めるべきではなくても、求めるほうが人間性にとって自然だとは思っています。
ただしこの場合の美しさは、『イケメン』などという低級なるものではない。『晴れやかな』であってほしい。リーダーの顔が晴れやかだと、それを見ながら従(つ)いていくわれわれの気分も晴れやかになるから。気分が晴れやかになるのは大切です。この頃は国内国外とも、気が滅入ることばかり。それらに対決していかねばならないのだから、気分ぐらいは晴れやかでないと」
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――幅広い層からの人材登用が認められていたとされるギリシアですが、実際は、アルクメオニデス一門出身者が指導者となることが少なくなかったようです。この家門が指導者の出身母体として中心的なのだとすれば、アテネは民主政というよりは王政という感もありますが。
塩野「ギリシアのアテネで力を持ったアルクメオニデス一門は、あの時代のアテネの人材提供機関と考えたらよい。これはローマでは、元老院が相当します。国政を担うに適した有能な人材を、次々と提供する機関として。日本ならば、一昔前の東大法学部や大蔵省、という感じの。
一族の直系の男子だからと肩入れするよりも、娘を嫁がせた相手に期待するということでは、大阪の商家の婿取りに似ていますが、内実はまったくちがう。商家ならばその家の経済力の向上が目的ですが、こちらは国の政治力の向上が目的なのだから」
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