高校山岳部8人死亡 雪崩を甘く見た“人為ミス”

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 登山講習の高校生らを巻き込んだ雪崩事故。雪山で起きた悲劇は、時が経つにつれ、人為ミスだった可能性が強まっている。

 栃木県那須町のスキー場で雪崩が起きたのは3月27日のこと。県高校体育連盟主催の登山講習に参加していた県内7校の高校生と教諭ら48名が雪崩に遭い、40人が負傷、大田原高校山岳部の生徒ら8人が亡くなる惨事となった。

雪崩があった那須温泉ファミリースキー場(同スキー場のFacebookページより)

 地元記者の話によると、

「雪崩は、3日間行われる講習会の最終日に起きました。前日から栃木県には、大雪、なだれ注意報が出るほど雪が降っていたため、当日予定されていた茶臼岳への登頂は中止したのです」

 この時点ですべてを中止しておけば、生徒たちは雪崩に巻き込まれることもなかった。が、なぜか、スキー場のそばで、雪を掻き分けて道を作るラッセル訓練を敢行したのである。

「講習会の責任者は県高体連の登山部委員長で、生徒たちが亡くなった大田原高校の数学科の教諭でした。山岳部指導経験は20年以上になるベテランですが、事故当時、委員長はラッセル訓練には参加しておらず、現地登山本部が置かれた町内の旅館にいたことが分かっています」(同)

 訓練決行を決断した本部とは逆に現場には危惧があったかも知れない。もっとも、高校生の冬山登山については、原則として行わないよう、スポーツ庁が県教育委員会や高体連に通達している。今回、主催側は“春山”との認識でいたようだが、県警が業務上過失致死傷の容疑で捜査を開始。いずれ何らかの結論が出ることになる。

 登山家・野口健氏は言う。

「スキー場に近いので、油断をしたのではないでしょうか。今は、一番雪崩が起きやすい時期です。普段以上に注意が必要で、気になれば止めるぐらいでないといけない。雪崩を察知する能力が、指導者にまるで無かったと思われます」

 何よりも中止にする勇気が必要だった。

週刊新潮 2017年4月6日号掲載

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