小金井刺傷事件「冨田真由が善人だったら、あんなことにはならなかった」 犯人からの手紙

国内 社会

  • ブックマーク

■「覚悟が出来ました」

冨田真由さんのTwitterより

 2016年5月、東京都小金井市で当時大学生だったシンガーソングライターの冨田真由さんが刺され、重傷を負った事件。殺人未遂の疑いで逮捕された岩崎(旧姓:岩埼)友宏に、今年2月、懲役14年6カ月の判決が下された。岩崎は判決を不服として控訴した。

 それから1カ月経った3月30日、この事件を追っていた傍聴ライター・高橋ユキ氏のもとに一通の手紙が届く。

 岩崎友宏本人からの手紙だった。

「控訴取り下げます。覚悟ができました」

 そこには、反省の弁が記されていた。

「被害者の供述調書を何度も読み、被害者の苦痛や怒りを知りました」

「とにかく働らきます(原文ママ)。遊ぶ暇はないと思います」

「一生反省。冨田さんの痛みを忘れてはいけないと思います」

 高橋氏はこれまで何度か岩崎と手紙をやりとりし、数度面会している。「新潮45」4月号に掲載された「34ヶ所メッタ刺し 小金井ストーカー事件」には、岩崎が弁護士や自身の親への不満を口にしたり、お菓子や本などの差し入れを高橋氏に要求する様子が詳しく書かれている。

「これまで事件の反省については口にしていなかったので、今回の手紙の内容には驚きました」(高橋氏)

 実際、この手紙が届いた前日、岩崎が控訴の取り下げを申請し、東京高裁に受理されていたことが分かった。

 手紙に書かれていたことは本心なのか。

 高橋氏は本人に確かめるべく、その日のうちに岩崎が拘留されている立川拘置所に向かった。

■血まみれの写真

「“反省してます”と手紙に書いてあったが、本音はどうなんですか?」

 高橋氏が尋ねると、岩崎は、

「あれが本音ですよ」

 と語った。控訴取り下げについては、

「昨日、一昨日かな、決めました。控訴するにあたり主張を書き出してみたんです。計画性がなかったこと、その証明、いろいろ書いたんですが、うーん、って感じで。(弁護士などから助言は)言われてないですよ、特に。自分の中で考えただけ。弁護士とはやりとり一切してないです」 

 反省の言葉については本心と語ったが、面会の話題のほとんどは、やはり冨田さんに関することだった。

「冨田さんのこと、毎日考えます」

 そう言った岩崎は、ある写真を差し出してきた。

 高橋氏は目を疑った。

「事件当時の、冨田さんが血まみれになった写真でした。担架に乗っていて、刺された傷がよく分かる。そんな写真を見せて相手がどう思うか、冨田さんがどういう気持ちになるか、全くわかってない、平気な様子でした」(高橋氏)

 岩崎は、「冨田さんの怪我はひどい。一生残る傷ですね」と他人事のように言ったという。

 他にも、自分が加害者であることを忘れたかのような発言を繰り返した。

「(事件後、Twitterを更新していない冨田さんについて)ファンのこと考えてないですよね。意識を取り戻したのにファンに伝えることすらしなかった」

「彼女はまだ生きている。自殺しなかったことがすごいですね。強いですよ。彼女の意思は強い」

 面会後、高橋氏は語った。

「やはり岩崎は、変わっていませんでした」

■「私はダメ人間です」

 判決直後に高橋氏に送った手紙で、岩崎は自分の性格を次のように分析している。

「犯罪を犯したという自覚が乏しいんだと自覚しています」

「私は人として大切なことが欠落しているダメ人間です」

 そして自身に問いかけるように書いていた。

「私には、反省することが出来るのでしょうか? 反省とは、何なんでしょうか?」

 この手紙の2週間後に、「控訴取り下げ」の手紙が送られてきた。“反省の弁”を述べた2枚にわたる便箋の冒頭には、こう記されている。

「冨田真由が全くの善人だったなら、あんなことにはならなかった」

 控訴を取り下げたことで、岩崎の懲役14年6カ月が確定した。短すぎるとも言われるその期間は、“反省”に足りる時間なのだろうか。

デイリー新潮編集部

新潮45 2017年4月4日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。