乳児噛み殺し事件 従順なレトリバーが凶暴化する5つの引き金
■習性のままに
もっとも、祖父母の近所の住民に話を聞くと、
「昔から複数の犬を飼い、厳しく躾けていた」
「犬についてはプロはだしで、他の飼い主にアドバイスをしていたほど」
などの証言もある。
ゆえに、狂暴化とは離れたところに「引き金」を見るのは、言わずと知れた元人気歌手で現在は犬のしつけ教室「AFC」主宰。「優良家庭犬普及協会」専務理事も務める佐良直美さんである。
「普段それほど見慣れていない、ミルクの匂いのする生き物がテリトリーに入ってきた。興味本位で思わず咥えてしまったというのが実態かもしれません」
問題は、その「場所」だという。
「レトリバーというのは、もともとイギリスで水鳥の猟犬として開発された犬。ハンターが撃った鳥を、水辺で咥えて運んでくるのが仕事で、レトリーブというのは『回収』の意味なのです。ですから、レトリバーは旧来の習性のままに、軽く噛む時も運びやすい頭を噛んだ」
それが場所が場所だけに、致命傷になってしまったとも想像しうるのだ。
さらには、今回のケースとは少し離れるが、と前置きをして、
「稀に精神的に疾患をかかえた犬がこうした攻撃性を示す」(専門家)
との指摘もあるのである。
元東京高検検事で、弁護士の川口克巳氏によれば、
「本件でお母さんが自分の両親に厳罰を求めることはないでしょうから、当局もそれを十二分に考慮し、祖父母を重過失致死罪で立件しておいて、罰金で済ませる、あるいは不起訴にして、注射済票を着けなかったなどの、別の形式犯の罰金で済ませるといった処置になるのではないでしょうか」
と言うから、2人が重罰を受けることはなさそうだが、それにしても、この祖父母が、残りの人生に重過ぎる十字架を背負ってしまったことは間違いない。
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