盛土問題を生んだ「都庁内の悪しき縦割り」 豊洲問題の真相(2)
前回、豊洲市場問題の隠れた“犯人”として、「民進党(旧・都議会民主党)」の存在を指摘したおときた駿・都議会議員だが、さらなる“犯人”として「都庁」の組織構造を挙げている。一体どこが問題なのか。再びおときた氏の新刊『東京都の闇を暴く』から引用してみよう。
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■局内の連携すら取れない
都民ファーストの会東京都議団幹事長のおときた駿都議
都の資料を見ると、公式ホームページなどに掲載されている説明図では「盛土」がなされている一方で、技術会議という専門家たちが集まる会議の資料では、建屋の下には盛土が描かれておらず、実態に近いものになっています。つまり都職員の、少なくとも技術職の職員たちの間では間違いなく共有されていたはずの事実が、なぜか事務職の職員たちが扱う広報レベルでは歪んでしまったということです。
(中略)
隣の部署が何をしているのかわからない・情報共有がされないというのが「縦割り」の弊害であると書きましたが、都庁内では同じ部局の中ですら、技術職と事務職間の情報共有がなされていなかったわけです。もはやこれは、縦割り行政の悪癖が極限まで生じた事例と言えるでしょう。
(中略)
豊洲新市場は中央卸売市場が担当していたわけですが、組織内でも盛土を行う「土木担当」と、地下に空間を作った「建築担当」が細分化されていて、連携が取れていませんでした。そうした組織体制の中で、市場長は2年のローテーションで次々と代わり、「減点方式」「前例踏襲主義」の中で抜本的な問題解決を図ることができず、誰も責任を取れる状況にありませんでした。
■ホームページ一つとっても……
都庁の「縦割り」の弊害を象徴しているのが、特にホームページ運営でしょう。普通の企業であれば会社のホームページは一元管理されており、部ごとに異なるホームページを運営しているなんてことはまずありません。ところが都庁では、局ごとに独自のページを持っていて、その仕様もデザインもバラバラ。それぞれ別のサーバーと契約し、制作も別々のクライアントに発注しているからです。そのため、ユーザーからしてみれば非常に見づらい上に、個別に発注するための経費も余計にかかっています。
その結果驚くことに、都のホームページ運営の経費は一時、年間3億円以上にも上っていました。こうしたものは部局を超えて一元化して、相手先を一社にして外注すれば経費の大幅な削減が可能になる上に、デザインや仕様にも統一感が生まれます。ところがそれぞれに局長がいて、独自の組織体を持つ各部局の縄張り意識は非常に強く、業務内容が異なるなどの理由で是正されないまま今に至っています。
民間企業でも、営業部と企画部の連携が悪いなどの問題はよく聞かれますが、公務員組織・行政の場合、コスト意識の低さからか、特にこうした組織間の「縦割り」の弊害が強いと言われています。部局外ならまだしも、部局内においてすら、隣のチームが何をやっているかの情報が正確に共有されていない場合があり、それがあの「盛土問題」の原因の一つではないかと考えます。
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おときた都議は、「豊洲市場の問題は、こうした都政の人的・組織的な課題が凝縮され、表出した象徴的な出来事の一つだ」と指摘する。問題の根本解決には、過去の責任や経緯をあぶり出すだけでなく、問題を生み出した環境や土壌そのものを変えなくてはいけないのかもしれない。