「金正男」長男の告白ビデオ 北朝鮮への3つのメッセージとは
「北風を吹かせる」とは、韓国が折に触れ、北朝鮮を政治的に“利用”することの喩え。朴槿恵大統領(65)に憲法裁が罷免の判決を下したのは3月10日のことだ。一方、金正男の長男が「父は殺された」と動画で告白したのはその僅か3日前。2点を結ぶ、ビデオに込められたメッセージ3つとは。北風を吹かせたのは誰か。
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長男キム・ハンソルの告白は40秒で、北朝鮮の外交官旅券を示しながら、〈自分は北朝鮮のキム・ハンソルで、妹と母と一緒にいる〉と語ったのだ。かつて直撃取材をしたジャーナリストの宮下洋一氏によると、
「顔の雰囲気も英語の訛りも本人に違いありません」
ところで、動画公開元は「チョンリマ民間防衛」なる団体。彼らはサイトで、
「先月、緊急の保護を求められ、家族3人を安全のために移動させた」
とし、オランダ、中国、アメリカとあともう1つの計4カ国が支援してくれたことに感謝を申し述べている。情報不足から様々なミステリーの輻輳を思わせるところ、ひとつずつ解き明かしていくと、
「匿名の残りの1つは我が方。つまり国家情報院の庇護下にあると見ていい」
と韓国政府関係者。これに首肯するように早大の重村智計名誉教授が解説する。
「まず、『北朝鮮の国民たちへ』という動画のタイトルですが、北の人々は自国のことを『共和国』と呼びます。そのうえ、『チョンリマ』の英語の綴りが、韓国語からの英訳になっている。これらの点から韓国側の、つまり国情院の手になるものと言えるでしょう」
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