北朝鮮、中国を異例の批判 背景に“弾道弾”

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金正恩委員長

 日米首脳がゴルフを楽しんだ直後に中距離弾道ミサイル〈北極星2〉を発射、世界を騒がせたかと思えば、お次はマレーシア・クアラルンプール空港の金正男暗殺事件で注目を浴びる北朝鮮。

「その陰で2月18日、中国が北朝鮮からの石炭輸入を年末まで停止すると発表しています。すると23日、北朝鮮の朝鮮中央通信が〈米国の音に合わせて踊っている〉〈非人道的〉〈卑しい行動〉と激しく中国を非難したのです。北朝鮮が中国を非難するなど異例ですが、よほどショックだったのでしょう」(国際部記者)

 中国の環球時報紙は北の非難を「1つの事件」とまで評したが、国連安保理の制裁下にある北朝鮮にとって石炭は総輸出額の3分の1を占める重要な外貨獲得源。しかも中国は北朝鮮唯一の同盟国なのだ。

「そのくせ、〈わずかばかりの金が遮断されたからといって、北朝鮮が核兵器と大陸間弾道ロケットの製造が出来なくなると思い込むのは全く子供じみている〉と北朝鮮は強がっていますが、やはり焦点はこの“弾道弾”開発でしょう」(同)

 とある国際政治研究家も言う。

「北朝鮮の体制が崩壊すれば大量の難民が生じ、困るのは中国。このため制裁に消極的だった中国が石炭禁輸に踏み切ったのは驚きでした。が、実は前日、米中の外交トップが会談し、北朝鮮の核・ミサイル問題を話し合っています。いよいよ中国も北朝鮮の制裁に本腰を入れる姿勢を見せざるを得なかったのでは」

 金正恩委員長は〈新年の辞〉で、年内のICBM発射実験を宣言しており、これは米国が核ミサイルの射程に入ることを意味する。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「実際にICBMが発射され、ハワイ沖にでも墜ちたとしたら、トランプ大統領が黙っているはずがありません。中国のお膝元、黄海で米・英・豪海軍などを展開させ、海上封鎖くらい行うでしょう。そうした際でも中国が発言権を保ち、事態への介入を可能にするには制裁に協力せざるを得ない」

 北朝鮮に崩壊されても暴発されても中国が生き延びるための窮余の一手なのだ。

週刊新潮 2017年3月9日号掲載

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