東京マラソン“世界記録”戦略 日本選手は蚊帳の外でも…

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優勝したキプサング

 現在の男子マラソンの世界記録は2時間2分57秒。2003年以降、それは6度更新されているが、その全てがベルリンマラソンが舞台となっている。

「そのため、世界のトップランナーたちは“ベルリン”に照準を合わせてトレーニングしています」

 とマラソン関係者が語る。

 ところが、この“ベルリン”のライバルに“トーキョー”が名乗りを上げた。

 今年で11回目を迎えた東京マラソンはコースを一新。雷門や富岡八幡宮といった観光名所を望めるようになったことに加えて、“高速化”を徹底追求する仕様となったのだ。

「旧コース最大の難所は、ゴールの東京ビッグサイト手前の佃大橋。精神的に一番辛い35キロ過ぎで、高低差が激しい上に、強烈な海風にさらされました。しかし、ゴールを東京駅前に変更した新コースはひたすら平坦で、これといって難所もなくなっています」(同)

 2月26日に行われたレースがそれを証明した。優勝したケニアのキプサングが国内最高となる2時間3分58秒をマーク。中継ではことさら“世界記録ペース”と比較された。日本人トップを走る選手についても、“日本人最高記録を上回る”と、視聴者の期待を煽りに煽った。

 なるほど、馴染みの薄いケニア選手同士の鍔迫り合いや、その遥か後方を走る日本選手を単に映されてもピンと来ないが、“すわ歴史的瞬間か”となればチャンネルを替える指も止まる。

「これで来年以降も“世界記録が出るかも”と煽れますね。もっとも、日本人選手は蚊帳の外、というのが情けないですけど」

 と先のマラソン関係者。

「視聴率もさることながら、招待選手に払うギャラも、来年からは安く抑えられそう。今回の結果を知ったトップ選手たちは“トーキョー”を走りたくてうずうずしているでしょうから。オリンピックもありますしね」

 いつかこの“トーキョー”で日本人ランナーが月桂樹を戴冠できればいいのだが。

週刊新潮 2017年3月9日号掲載

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