栗山監督が漏らした「開幕・斎藤佑樹」というジョーカー

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 これを球春の椿事と呼ばずしてなんと言おうか。元ハンカチ王子の斎藤佑樹(28)が、春季キャンプも早々に、開幕投手を約束されるやもしれない。それも、師匠の日本ハム・栗山英樹監督(55)直々のご指名とあっては……。ちょっとジョークが過ぎないかしら。

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元ハンカチ王子の斎藤佑樹

 それを聞いた者は皆、我が耳を疑ったという。2月2日にアリゾナでキャンプインした斎藤は、ブルペンで51球を投げ復調をアピール。舞台を沖縄に移した16日の練習試合でも、2回を投げて1安打1失点(自責点0)と粘りをみせた。そんな斎藤の様子を見た栗山監督は、“明らかに球の感じが違う。開幕投手も戦略としてアリだね”と漏らしたのだ。

 とはいえ、甲子園で拭った汗が涙に変わったと皮肉られてきた「元王子」。昨シーズンはわずか11ゲーム出場で先発は3回のみ。プロ通算14勝では、チームのエースナンバー「18」は荷が勝ちすぎた。

 そんな状況に救いの手を差し伸べたのは、ここでも栗山監督だったという。

 スポーツ紙記者の話。

「昨年末の契約交渉で、斎藤は背番号の変更を直訴して承諾されました。キャンプはそのお披露目も兼ねていますが、新背番号『1』は斎藤にとって早稲田実業時代のナンバーに逆戻り。“下積みから始めよ”という監督からのメッセージが込められているとか。とにかく話題作りに躍起です」

 再起を狙う「元王子」の懐古趣味はまだまだ続く。伸び悩んでいた投球フォームも童帰りしているのだ。

 日ハムの先輩で野球解説者の金石昭人氏が言う。

「学生時代に調子のよかったフォームを取り戻そうとしていますね。軸になる右足を曲げる独特のフォームは体幹の強さが必要で、オフから個人トレーナーをつけて鍛えている。チーム全体の状態は普段通りで、よいと思いますが、キャンプでの斎藤選手はまだ実力が備わってないように見えます」

■「単なる話題作り」

 自らを鍛えあげるそのトレーニングでも、斎藤は「元王子」らしい振る舞いを見せているのだ。

 球団関係者によれば、

「キャッチボールにしてもトレーナーが相手でね。オフでも彼ら2人で豚しゃぶを食べている。本来、そういった時間はチームメイトと過ごし、互いの距離を埋めるもの。チームでも浮いた存在になっているのでは」

 その孤独のウラには、こんな事情があると、別の球団関係者が継ぐ。

「斎藤が入団した翌年に就任した栗山監督は、ハンカチフィーバーのおかげで苦労せずメディアに取り上げられた。そんな原体験があるから、今でも話題作りで斎藤のことを口にしちゃうんですが、他の選手からすれば白けるばかりですよ」

 事実、WBCを辞退した大谷翔平の復帰が未定とはいえ、昨季チーム最多の11勝をあげた有原航平や、高梨裕稔など斎藤の実力を上回る先発候補が居並ぶ。

 野球評論家の江本孟紀氏はズバリ直球、手厳しい。

「斎藤が開幕投手なんて今までの実績を考えたらありえないし、単なる話題作りでしょう。大谷の二刀流もそうですが、栗山監督と日ハムは話題性のためには何をやってもいいという方向性が一致している。よく言えば柔軟性のあるチームカラーなんですよ」

 冗談好きの栗山監督のようなオトナを世間では「ジョーカー」というが、トランプのそれには2つの意味がある。「道化師」と「切り札」。果たして今季の斎藤はどちらに転じますやら。

ワイド特集「早春の椿事」より

週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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