「日本は毒針で中国を狙うサソリの形」中国の反日教育の実態
■将来の中国
辣椒 今の中国は真摯に物事を考える人には生きづらいです。
石平 そうなると、行き着くのは何も考えないことです。
辣椒 その通りです。「社会や政府を批判して何のメリットがある」と考えて、金儲けに走るのです。
石平 毛沢東は27年にもわたって専制統治を続けました。彼の死後、トウ小平が改革開放政策を始め、中国共産党の圧政自体は変わらなくとも、その他の新鮮な空気も徐々に中国に入って来て、人々は「中国が進歩していく、だんだん自由になるだろう」と思うこともできました。胡錦濤政権の時も、毛沢東ほどには徹底的な支配をせず、弾圧はあるものの放置された空間もあったわけです。ところが、習近平政権は完全に毛沢東時代に戻りました。結局この六十数年間で中国は進歩がなかったわけです。
辣椒 毛沢東時代と変わらぬ性質のまま、さらに進歩しているとも言えます。もしこのまま経済が破綻することがなければ、習近平は毛沢東以上の史上最も完璧な独裁体制を築けるわけです。中国政府は、インターネットを通じた全国民の信用評価を築き上げようとしています。オンライン取引のアリババなどがやっているネットユーザーのランク付けを中国共産党が応用したらどうなるのか? ブラックリストに入ったら鉄道や飛行機の切符も買えず、パスポートも入手できなくなるのです。すでに政府批判をする弁護士などがその被害に遭っています。
石平 完璧な専制と言うほかありません。そのように各人、各家庭に入り込む専制は清代以前すら存在しなかった恐ろしいことです。あらゆる人の意見が中国共産党に掌握されるのです。そうなると胡錦濤政権時代にはまだ存在したガス抜きさえもなくなってしまい、民衆の不満や怒りは溜まりに溜まっていつ爆発するかわからなくなります。
辣椒 もし民衆の不満の爆発が起きたら、中国は乱れに乱れて、今以上に悲惨なことになるのではないかと、悲観的になってしまいます。
石平 問題はそこにあります。中国人民は人民自身が社会を管理していく術を失ったのです。胡錦濤政権時代には公民社会(市民社会)が芽生えました。この意義は社会が自主的に社会を管理できる点にあります。しかし習近平はこれを奪った。このことは大きい。残念なことにここ数年、中国は世の中がよくなるどころか、元の暗黒時代に戻っています。
辣椒 私が中国の将来について悲観的なのは市民社会が未発達なまま押し潰され、まさに中国共産党が目指したように「中国共産党がなければ乱れる」国になったからです。もし経済が破綻するなどして中国共産党の支配体制が崩壊でもしたら、未曾有の数の難民が発生するのではないでしょうか。
石平 私は生涯日本で生きていくつもりですし、息子は日本人です。息子もその息子もこの美しい国で平和に暮らしてほしいと願っています。中国共産党が崩壊して数百万や1000万以上の中国人難民が押し寄せたら日本社会も崩壊するのではないかと気になります。もう1つ考えられるのは、いよいよ中国共産党が崩壊することがわかった時に周辺国へ戦争を仕掛けることです。まず考えられるのは台湾ですが、日本に対してもないとは言えません。
辣椒 この本にもありますが、昨年安全保障関連法案のデモが盛り上がった時に私は風刺画を描きました。もし中国共産党が攻めてきたらどうするのかとの思いでした。デモの中でその作品を掲げていたら大勢の人に取り囲まれました。同行した友人がガードしてくれて、警察が来てようやく収まりました。
石平 彼らに表現・集会の自由があることは確かですが、辣椒さんにも表現の自由があって然るべきです。しかし、彼らは自分たちの表現・集会の自由以外の自由は認めないのです。これは日本の左翼の特徴で、中国共産党と変わりません。つまり、彼らの頭の中でもいい人、悪い人という図式があって、いい人は何をやっても許されるが、悪い人は何をやるのも許されないのです。私はインターネットでよく日本のリベラル派も批判しますが、自分たちの好みに合わない意見の存在を認めないのは反民主主義であり、これらを喜ぶのは習近平にほかなりません。私たちの声はなかなか中国には届かないでしょう。今私たちがやれることは日本の読者に中国共産党の本質をわかってもらうことだと思います。
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なお、2月28日には東京新宿区で『共産党の〈ウソ〉と〈真実〉』というトークイベントを開催するという辣椒さん。東京大学の阿古智子准教授、ライターの高口康太さんの2人の中国通と共に、日本人には分かりにくい習近平政権の問題点を、自らの逮捕・尋問体験や、TV番組・インターネットの最新事情などを交えながら、レクチャーする。
(http://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01eaz8ypgixg.html)
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