世界トップレベルの日本の「競歩」 京大・山西がその魅力を語る

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東京五輪も夢じゃない

 イカ京――という言葉をご存知か。「いかにも京大生」つまり見てくれがガリ勉そのものの京大生を指す。

 京都大学工学部3年で物理工学科機械コースに所属する山西利和君(21)も、ピンと伸びた背筋に黒縁眼鏡、と風貌は“イカ京”そのもの。だが彼には、京大生離れした特技があった。

 陸上の世界選手権代表選考会を兼ねた日本選手権20キロ競歩が2月19日に行われ、山西君は1時間19分3秒で3位に入った。代表枠は3。3月18日の最終選考レース次第だが、彼が有力候補に躍り出たことは確かである。

 昨年のリオ五輪で荒井広宙(ひろおき)(28)が銅メダルを獲得したことからも窺えるように、現在、日本の競歩は世界トップレベルにある。

「今年の目標は、世界選手権に出て、メダルを狙うこと。ゆくゆくは東京五輪で金メダルを獲りたい」

 とは山西君ご本人の弁。

 元々は長距離走の選手だったが、京都・堀川高時代に競歩を始め、「深みにはまった」のだという。

その魅力を尋ねると、

「競歩は、陸上競技で唯一の判定種目で“失格”があるんです。したがって単に速ければいい、がむしゃらに手足を動かせば勝てる、というわけではありません。レースでは、ライバルの警告カードの枚数を確かめながら、どこでスパートをかけるかを考える。そんな駆け引きがおもしろいんです」

 と理路整然と説明する。

「堀川高の当時の顧問の先生が、彼を私の元に連れてきたんですがね。一目見て“これは将来大物になる”と断言しましたよ。とにかく身体能力が卓越していた」

 とは、山西君を指導する石川・小松短大の内田隆幸監督。内田監督は、荒井や、世界記録保持者の鈴木雄介(29)を育てた名伯楽だ。

「“高校総体で優勝する”と予言したら本当に勝った。その後、世界ユースでも優勝した。同時期の荒井の能力を5とすると、山西は8から9はある。世界記録更新や東京五輪の金メダルもあながち夢ではない」(同)

 36年ベルリン大会以来となる“京大卒五輪メダリスト”の誕生にご期待あれ。

週刊新潮 2017年3月2日号掲載

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