トランプ大統領との蜜月はリスキーなのか 相手を動かす「殺し文句」の法則
■首脳会談は「大成功」?
安倍総理とトランプ大統領の日米首脳会談については、大成功という評価が多い一方で、「接近しすぎではないか」といった批判をする人もいる。世界から批判を浴びている大統領に、一気に近づきすぎるのはリスキーだ、ということだろう。
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もっとも、そういう状況下であるにもかかわらず、懐に飛び込んでいったからこそ、トランプ大統領が意気に感じた、という見方もある。つまりリスク承知の行動が、相手の心をつかんだ、というのである。
古今東西の著名人の「殺し文句」を分析した『ザ・殺し文句』の著者、川上徹也さんは、同書で、成功する「殺し文句」の法則10カ条を紹介している。そのうちの法則【4】が「リスクを負って断言する」だ。川上さんはこう解説する。
「結局のところ、未来のことは誰もわからない。だからこそ、リスクを負って断言すると説得力が出るのです」
■菅官房長官の断言
川上さんが、その代表例として挙げているのが、一度首相を退陣した安倍氏に、菅義偉氏(現・官房長官)が総裁選への再出馬を促したフレーズだ。
「もう一度、安倍晋三という政治家を世に問う最高の舞台じゃありませんか? このチャンスを逃したら、次は難しいですよ。この最高の舞台を、みすみす見逃すんですか!」
この時期、国民の間に「安倍待望論」は盛り上がっていなかった。所属する派閥の後見人である森喜朗氏も反対をしていた。
しかし、菅氏は「待望論は本人が出馬して、政策を訴えてはじめて沸き上がる」という考えをもっていて、まずは出馬すべきだと安倍氏を必死に口説いたのである。
冷静に見れば、なぜ「チャンス」と言えるのかはよくわからないし、これで失敗すれば、責任を問われるリスクが十分あるのだが、菅氏はそのリスクを承知で「最高の舞台」だ、と断言した。だからこそ「殺し文句」として機能したのである。
■黒田官兵衛の断言
「リーダーが迷っている時に、『リスクを負って断言』することで背中を押す、というのは参謀の重要な役割です。
戦国時代に本能寺の変で主君、織田信長が討たれたとの報を聞いた秀吉は茫然自失となりました。この時、参謀の黒田官兵衛は、
『秀吉様、ご運が開けましたな。天下をお取りなさいませ』
と進言したと伝わっています。
もちろん、官兵衛にしても本当に確信をもっていたわけではないでしょう。それでも不確かな未来を断言したからこそ力強い『殺し文句』となったのです。これで秀吉の腹は決まったといいます。
このように誰かの背中を押したり、交渉の場などでは『リスクを負って断言する』ことは大切です。ただ自分がまったく信じていないことをテクニックとして断言することは難しいでしょう。
少なくとも発言者がその言葉を強く信じていることが重要です」(川上さん)
川上氏考案の殺し文句の法則【8】が「大義を訴える」で、【10】が「本気でぶつかる」。これらの「合わせ技」が今回の会見の成果につながったのかもしれない。