人呼んで“森ヨットスクール” 金融庁長官のスパルタ銀行教育
三十数年前、世間の耳目を集めた戸塚ヨットスクール。当時は、訓練生への過酷な教育に賛否両論が渦巻いたものである。一方、現在の金融業界では厳しい金融庁の指導を、事務方トップの長官の名を取って“森ヨットスクール”と呼ぶそうだ。さて、その“苛烈さ”はいかばかりか。
1月中旬の2日間、全国の地方銀行と第二地方銀行のトップが東京に集まり、個別に金融庁の幹部と“金融行政懇談会”を開いた。
「銀行業を取り巻く環境は、年々厳しさを増している」
会の冒頭、こう挨拶した金融庁の森信親長官(59)は続けて、
「人口減少といった変化により、事業の再構築を行う必要のある銀行が少なからずある。今後、地域の資金需要が伸びることは期待しづらく、従来の量的拡大に依存し続けることは困難だと思う」
預金と貸出の金利差で利ザヤを稼ぐのは、銀行のビジネスモデル。森長官は、この“常識”を完全に否定してみせた。さらに、
「行政として最も心配しているのは、これといった特徴もなく、規模も小さく、今後のビジネスモデルの継続性が見出せない金融機関。旧態依然とした資金供給者の理論でしか経営を考えられない金融機関が、“淘汰”されていくのは必然かも知れない」
ソフトな口調ながら、監督官庁のトップが“変化なき銀行の破綻は止む無し”と恫喝したのだ。これを聞いた地銀の頭取は、
「確かに、収益環境は非常に厳しいですが、最大の理由は日銀が1年前に導入したマイナス金利政策。それを棚上げして、何の努力もしていないような発言は許せません」
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