ワーカホリック「香川照之」を支えている執念
「女遊びは芸の肥やし」とよく言う。もっとも香川照之(51)の場合、「離婚は芸の肥やし」なのかもしれない。何しろ、この数年、ワーカホリックと言われるほど休みなく働き、昨年12月に離婚した後も「これからは、仕事だけして生きていく」と語っているのだ。
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ワーカーホリック?
香川に女性問題があったとは聞かない。なのに21年も連れ添った知子夫人とあっさり離婚したとなれば、余程の事情があったようだ。
「香川が『市川中車』を襲名し、俳優と歌舞伎役者の二足のわらじを履くようになったのは2012年。以来、仕事に忙しく家庭を顧みなかったことが、離婚の最大の要因でしょう」(芸能記者)
実際、二足のわらじを履くようになってからの香川の仕事量は、驚く程である。例えば、昨年は歌舞伎で4つの公演に出演。「99・9─刑事専門弁護士─」、「スニッファー 嗅覚捜査官」といった連ドラや、映画「クリーピー 偽りの隣人」に出ている。この他、単発のドラマに加え、CMや雑誌の仕事もこなしている。
「歌舞伎は、通常、1つの公演を25日間やります。中車は、1月の公演でも、昼の部と夜の部を合わせて3つの演目に出ていますから、25日間休みなしで朝から晩まで出ずっぱりの状態です。昨年12月26日に前回の公演が終わり、1月3日に今回の新春公演が始まるまでの5日間程は、他の役者たちと集まって稽古をしていたはず。当然、それ以前は各自で練習しています。これに加えてドラマや映画に出ているわけですから、休む暇など全くないでしょう」
テレビ局の幹部も、
「2013年のことですが、自分が出演している連ドラの撮影現場で、香川さんは大きな姿見の前で歌舞伎の練習をしていた。そこまでするかと、共演者やスタッフは驚いていたそうです」
■親の後ろ盾
誰が見てもワーカホリックである。そんな香川は離婚後、周囲に、
「これからは、仕事だけして生きていく」
と、語っている。単なる仕事好きなのか。いや、そうではない。46歳で歌舞伎の世界に入ったことが、大きく関係している。演劇評論家の上村以和於(いわお)氏は、
「中車は、歌舞伎を始めてから4年余ということを考えれば、良くやっていると思う。舞台を見ていて、かなり努力をしているのがわかる。昔の歌舞伎の映像を観たり、先輩に台詞を録音してもらい、それを何度も聴いたりして、完全にコピーするつもりで覚えているそうです。普通の歌舞伎役者の練習とはかなり違いますが、それでもあれだけの演技ができるのは、やはり俳優・香川照之としての素地があるからでしょう」
というものの、さる演劇記者に言わせれば、
「歌舞伎役者としての評価はまだまだ。今のところ、彼がやっているのは、新作歌舞伎であったり、父・三代目市川猿之助が取り組んできた“復活物”が多い。義太夫物など、古典と呼ばれるような歌舞伎はやっていません。実は、大人になってから始めた人が数年でできるようなものではないのです」
現実はそう甘くはないが、
「彼が家族を犠牲にしてまで歌舞伎をやっているのは、自分の中に流れる歌舞伎の血を絶やしてはいけないという使命感でしょう」
とは、歌舞伎関係者。
「それは、もはや執念と言った方がいいかもしれない。究極的な目的は、将来息子である政明君(13)、つまり市川團子(だんこ)に父が名乗った猿之助を襲名させること。子役時代は、誰でも比較的出演機会に困りません。ところが10代後半から20代になると、一転して苦労する。その時にモノを言うのが親の後ろ盾。香川には才能があるので、10年後、20年後に本格的な歌舞伎役者になれる可能性がある。つまり、息子がきちんと役をもらい、猿之助を襲名できるまでは自分が頑張るしかないと考えているのです」
正しく役者バカである。
ワイド特集「近ごろバブルの人々」より