「なめんなジャンパー」を着たくもなる…生活保護の現場

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 河上肇の『貧乏物語』によれば、貧困は社会の病であるという。だとすれば、生活保護の不正受給は本当に癒されるべき貧困世帯を愚弄する「詐病」である。「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」と書いたジャンパーを着ていた小田原市の職員は、糾弾されるべきなのだろうか。

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「元暴力団員の受給者のお宅を訪れたら、皆でマージャンをしている。刺青を見せてパイをかき回す相手に若い職員が“働きましょうよ”と一生懸命懇願しなくてはならないのです。いきなりビール瓶を投げつけられたこともありました。“死ね”、“殺す”といった罵声を浴びせられることはしょっちゅうです」

 そう話すのは、小田原市役所の元ケースワーカー(生活保護担当職員)だ。

 問題のジャンパーを小田原市の職員が着用していると報じられたのは1月17日のこと。それによると、きっかけは10年前、職員が切りつけられる事件が起きたことだった。同市の福祉健康部生活支援課長の栢沼教勝(かやぬまのりかつ)氏に聞くと、恐縮しながら説明する。

「この事件は、生活保護を打ち切られた60代の老人が業務用のカッターで職員の脇腹などを切りつけるというものでした。事件のショックは大きく、職場のモチベーションを落とさないために、係長クラスがお揃いのジャンパーを作ることを提案し、このデザインになったのです」

 費用は1人4400円、秋口になると希望者を募り職員の自費で発注した。あくまで課内の士気を高める目的だが、防寒のためにジャンパーを着て生活保護家庭を訪れることもあった。

「これまで苦情もなかったのですが……」

 と課長は話すが、新聞やテレビは容赦がなかった。〈開いた口がふさがらない〉、〈人権侵害〉と識者のコメントを紹介して、糾弾するメディアも。小田原市はすぐに加藤憲一市長が謝罪し、幹部の処分を発表する。危険に晒され続けてきたケースワーカーはここでも置き去りである。

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