「be動詞のおさらい」「小・中学校レベルの数学」…Fランク大学の驚くべき授業内容
■巨額の補助金「Fランク大学」驚愕の授業(2)
昨年11月、日本工業大学の学生たちが制作したアート作品から出火し、5歳の男児が亡くなる痛ましい事故が起きた。発火しやすいおが屑だらけの環境で白熱電球を点灯したことが原因とされるが、同大の学生たちは、日常生活レベルの科学的知識を持ち合わせていなかったのだろうか。ノンフィクション・ライターの白石新氏が、Fランク大学の実態に迫る。
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授業の驚くべき内容とは…(写真はイメージ)
2012年に田中眞紀子文科大臣(当時)が、3つの大学の設置認可を見送ったことがあった。そのとき問題になったのも、こうした大学の授業レベルの低さだった。当時、大学の英語の授業でbe動詞のおさらいをしていると話題になったが、いまも“be動詞祭り”はつづいている。
たとえば、河合塾のランキングで偏差値35の千葉商科大学の「1年英語(B)Ⅰ」では、
〈be動詞と一般動詞・単数形と複数形〉
として、2回にわたってbe動詞を学んでいる。あまつさえ、この授業の「準備学習等の指示」には、「辞書を持ってくること。予習をしておくこと」と書かれている。頭が混乱しかねないので念のために申し添えるが、中学1年生への指導ではないのである。
■“まじめに授業に出なさい”
また、同じ大学の商経学部には「研究基礎A」という授業があるが、これは同大のシラバスによれば、
〈クラス活動を通して仲間を作り、共に学ぶことの楽しさを知る〉
というものだという。小学校の道徳の学習目標のようだが、さらに驚いたことには、「履修上の注意」としてこう書かれている。
〈演習やグループワークを中心とした講義であり、1回の欠席や遅刻が、自らの知識習得の妨げになるだけでなく、他の学生に迷惑となる場合がある。体調管理をきちんと行い、やむを得ない事情が無い限り、欠席や遅刻をしないこと〉
要するに、風邪などひかずにまじめに授業に出なさいと、こうして懇々と諭さなくては授業が成立しないのだろう。教員の心中を察すると忍びない。
授業内容に「是正意見」がつけられた、びわこ成蹊スポーツ大学の「教養演習A」にも言葉を失なう。たとえば、
〈文章の並び方を論理的に理解することで、適切に文章を並び替えられたり、欠落文を挿入することができるように演習する〉
というのだ。大学の授業で「穴埋め」のしかたを教わっているらしい。理系科目では「情報と統計」もふるっている。統計に数学的知識は不可欠だと思うが、
〈……なお、統計については、計算はコンピュータに任せることを前提とし、数学的な議論をできるだけ避けつつ、いくつかの手法を概観することとしたい〉
とのことである。
■高校以前で習う初歩的内容
おなじく授業に是正意見、または改善意見が出された3つの大学も見てみたい。まず、福岡工業大学の「基礎物理学」の達成目標は、高校ですんでいるはずの、
〈ベクトルの計算や作図ができる。微分や積分の基礎的な概念を理解する〉
はたして、この授業のベクトルは大学で学ぶ物理学に向っているのだろうか。
東京未来大学の一般教育科目「T2-数学」は、シラバスに驚くべき言葉が並ぶ。この科目で使用するテキストの第1章には、
〈ここではデータを整理するために必要な平均と割合、グラフについて学ぶ。高校以前で習う比較的初歩的な内容である〉
と書かれているが、「高校以前で習う」とは、「小・中学校で習う」ことも含むということである。
続いては、横浜創英大学の「コンピュータA」。
〈パソコンを書類作成の道具として活用できるようにするため、文書作成ソフト(Microsoft Word)の基本を学ぶ……〉とある。
市役所などが主催する、のどかな無料パソコン講座の光景が眼に浮かぶが、この大学ではこれで単位をもらえるのである。
最後に、学生が事故を起こした日本工業大学の授業内容も紹介しておきたい。たとえば「基礎英語Ⅰ」はこんな内容だ。
〈日常の挨拶・自己紹介の表現を身につけながら、平叙文・疑問文・命令文、さらに存在構文のthere is/are…を学習することを目標とする〉
また、保護者向けの就職ガイダンスの内容も、
〈就職活動において「親にできること」(中略)や「やる気をなくしてしまった時にはどうすれば…」など、就職戦線を勝ち抜くための知恵と具体例を知っていただき……〉
と、中学受験に臨む小学生の親に向けたものでもかくや、という内容だ。
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特別読物「漢字のおさらいとbe動詞……巨額の補助金『Fランク大学』驚愕の授業――
白石新(ノンフィクション・ライター)」より
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