トランプ就任式を断った「有名アーティスト」たち

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 とまれ今月20日は、トランプ氏一世一代のハレの日のハズである。午前11時半からの就任式で「宣誓」して、第45代大統領に就任するのだ。大国アメリカの新しい元首の門出だから、むろん多くの人の祝福を受ける……ハズだったが、さすがはトランプ氏。やはり前代未聞の事態が……。

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就任式参加を断ったセリーヌ・ディオン

 もっとも、トランプ氏はお得意のツイッターでは、 

〈思っていた以上に大規模になる。楽しんで!〉

 とご満悦の様子だ。実際、8000人もの音楽隊を率いてのパレードののち、トランプ氏がワシントンの連邦議会の議事堂前に設えたステージに立つと、70万〜90万人が詰めかけている、と予想されていた。

 そればかりか、さすがはトランプ氏、なにもかもが大規模になるようで、

「100以上の団体がデモを計画しているため、2万8000人もが警備に当たる。また、すでに二十数名もの民主党議員が欠席を表明しています」(在米ジャーナリスト)

 なにごともケタが違うのだが、実は、出席を断ったのは議員だけではない。

「2009年のオバマ大統領の就任式には、ジョン・ボン・ジョビ、シェリル・クロウ、スティービー・ワンダー、U2、ビヨンセ、ジェイムズ・テーラー、ハービー・ハンコックらが名を連ねました」

 と語るカナダ在住のジャーナリスト、關(せき)陽子さんは、続けてこう語るのだ。

「ロックバンドKISSのボーカル、ジーン・シモンズは、本人は出てもよかったそうですが、奥さんと娘がトランプを毛嫌いしているので、出演を辞退したとか。同じく辞退したエルトン・ジョンはゲイを公言しているので、マイノリティに心ない言葉を投げるトランプの依頼を断るのは、もっともな帰結でしょう」

■汚点になりかねない

 だが、断ったのはそれだけではない。先のジャーナリストによれば、

「ラスベガスのカジノ王に頼み、セリーヌ・ディオンとガース・ブルックスに出演を依頼して、ともに断られました。モービーは自身のインスタグラムで“出演契約係からトランプの就任式でDJをすることを検討してくれと頼まれた。アハハハハハ、ちょっと待て”と発言。音楽プロデューサーのデイヴィッド・フォスターは“丁重に断った”と言い、レベッカ・ファーガソンも“グレーの部分が多いので断った”とのこと。イタリアのアンドレア・ボチェッリはボイコットを求めるファンからの圧力で辞退。歌手のシャルロット・チャーチはツイッターに“ネットで簡単に調べれば、私があなたを暴君と思っていることがわかるはず”と書きました」

 ちなみに、チャーチはツイートの最後に、ウンチの絵文字を4つ並べている。

「トランプは歴代大統領のなかで最もセレブで、エルトン・ジョンやセリーヌ・ディオンとも何度も会っているだろうに、だれも就任式に出てくれないとは皮肉ですよね」

 と感想を漏らすのはデーブ・スペクター氏である。

「就任式で歌うことは歴史に残る、名誉でステータスある仕事。過去にはツアースケジュールの関係や、歌唱力に不安があるなどで断ったケースはあっても、それ以外の理由で断るのは前代未聞です。ただ、今でさえひんしゅくを買って支持率が低く、就任後、どんな問題を起こすかわからないトランプの就任式で歌うのは、自分の汚点になりかねないですからね」

 断った人たちの心中は、俳優リチャード・ギアがインタビューで語った言葉が代弁しているかもしれない。

「トランプはどう見てもムッソリーニだ。彼はあらゆるところで悪役を見つけては、それを排除すると言っている。ユダヤ人、黒人、問題があるやつはすべて排除しよう、と。こうやって始まるんだ……」

 その始まりの就任式なんて、まっぴらごめん、と。

特集「嵐の中へ船出した超大国『トランプ大統領』という魔人の急所」より

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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