金正恩、トランプへの贈り物は大陸間弾道ミサイル!?
元旦早々、〈米国本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験は最終段階にある〉と宣言してのけた北朝鮮の最高指導者、金正恩・党委員長。
20日に就任式を控えるトランプ次期米大統領は反射的に〈そんなことは起こらない!〉とツイート。北朝鮮のミサイルの能力に懐疑的な声が上がる一方で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は社説で「迎撃せよ」と論陣を張り、USAトゥデー紙やCNNも先制攻撃を選択肢に挙げるなど、敏感な反応を示した。
とある北朝鮮ウォッチャーは冷静に分析する。
「“新年の辞”は本来、国内向け。同じ演説で金正恩は〈能力の伴わない悔しさと自責の念で去年1年を送った〉と異例の反省姿勢を示し、“慈愛に満ちた指導者像”を強調しています。対外的には挑発的に見えるICBM実験に言及したのも、幹部を粛清する際のロジック同様、“弱きを助け、強きを挫く”イメージを人民に広めたいから。金家3代の偶像化を完成させるのが今年の目標のはずですよ」
というのも今年の北朝鮮は、“祝賀イヤー”なのだ。
「現地の声を聞くと、水害からの復旧が遅れ、1月8日の金正恩の誕生日を祝うことは止められていたようです。が、その後も、父の金正日総書記生誕75年、祖父の金日成主席生誕105年と記念日が続き、何より大事なのは両人を称揚するため8月に開く〈白頭山偉人称賛大会〉。この国際大会で自身への称賛も集め、金正恩の偶像化も実現するのではと見られています」(同)
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も言う。
「最高指導者が言った以上、発射実験を行うでしょう。実現可能だから発言しているのです」
北朝鮮政府は8日、改めて「好きな時にICBMを発射できる」と発表した。
「しかも、これまでの北朝鮮の技術向上を見る限り、実験成功は時間の問題です。その上、実験が成功してしまったら、世論の過敏な反応からわかるように、アメリカが黙っているはずもない。トランプ氏の対応次第では、今年中にも東アジアの軍事的緊張が一気に高まることになりますよ」(黒井氏)
大統領就任祝いにしてはあまりに剣呑な“独裁者”の贈り物になるというのだ。