「普通の体験談」が意外とウケる!  就活生が知っておくべき「キレイゴトぬきの就活論」(2)

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■ガクチカの落とし穴

 前回の記事で、企業は就活生に対して「志望動機」よりも「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を聞くようになってきた、ということを述べた。志望動機には無理のあるウソが多く、また自己PRも対策本でいくらでも繕うことができてしまう。それよりも、就活生の特性を見たい、と企業が考えているからだ。

 もっとも、この「ガクチカ」にも自己PRを盛り込もうとする学生が多い。しかし、必ずしもその熱意は功を奏しているとは言い難い、と大学ジャーナリストの石渡嶺司さんは指摘する。以下、石渡氏の新著『キレイゴトぬきの就活論』をもとに、「ガクチカ」の正しい書き方をご紹介しよう。

■定番ネタにウンザリ

 学生生活で力を入れたことと言えば、大学での勉強、サークル活動、アルバイト、旅行というあたりがテーマになりやすい。学生によっては、ボランティア、留学ということもあるだろう。

 定番ネタのアルバイトでありがちなのは、次のような内容だ。

「私は××という飲食店でアルバイトをしていました。~(以下、体験談が披露される)~。このアルバイトを通して、同僚ときちんとコミュニケーションをとること、それとお客様の気持ちに寄り添うことが大切と感じました。この思いを貴社でも生かしたいと思います」

 この文章のどこが悪いのか? と思う方もいるだろう。しかし、問題は上の文章では限られた文字数の中で、自己PR的な内容が多くを占めている点だ。「このアルバイトを通して~」以降は、自己PR的な内容だと見られる。

 学生は一所懸命書いたのだろうが、はっきり言って、誰でも書ける内容で、こういうものばかり読まされると、採用担当者はうんざりしてしまう。大した経験がないから、自己PR的な内容を入れてごまかそうとしているのでは、と勘繰るだろうし、そうなると結構な確率で落とされてしまう。

■普通の体験はあなどれない

 では、「ガクチカ」に自己PR的な内容を混ぜてしまう学生は、本当に大したことをやっていないのだろうか。

 石渡氏が、過去、エントリーシートの添削をした限りでは全くそんなことはなかったという。

「えー、でも普通ですよ。私のアルバイトは」

 そんな風に言う学生に、5分程度でもアルバイトの話をさせてみると、実は何らかのネタが出てきたというのだ。

「普通の中華料理店ですよ。ただ、厨房は中国人留学生ばかりで日本語があまり通じないのでそこが大変なんですけど」

「よくある喫茶店チェーンですよ。ただ、コーヒーの種類が30種類くらいあって、その説明が大変でした。おかげで今は全部飲み比べて説明できるようになりました」

 こうした話をする学生は、「自分の経験は普通で、ありがちだ」と言う。しかし、「中国人留学生とのコミュニケーション」「コーヒーの種類説明」は十分、その学生ならではの「持ちネタ」となりうるのだ。

 石渡さんは、こう解説する。

「接客を通じて、人とのつながりの大切さを知った、といったありきたりな自己PRをするよりも、具体的な経験、エピソードを述べたほうがはるかにマシです。もちろん、何らかの経験をして、こんな風に成長した、といった展開の書き方をするのが悪いとは言いません。ただし、エントリーシートに書くべきは、『良く出来た小論文』のようなものである必要はないのです。企業が知りたいのは、相手の人間性ですから、本人しかわかっていない内容を第三者にもわかりやすく書いて、事実関係だけで終わらせても構わないのです」

 それでは「普通の学生じゃん」と思われるのでは……という不安を持つ就活生もいるだろう。しかし、と石渡さんは続ける。

「企業は、普通の学生を欲しているんです。もちろん、企業によって『普通』の基準はさまざまでしょうが、学生時代にすごいことをやった人ばかりを必要としているわけではありません。『普通ではダメなのでは』という思いが強すぎると、エントリーシートに陳腐なサクセスストーリーもどき、自己啓発本もどきの文章を書いてしまいます。しかし、採用側がそんなものに心を動かされることはありません」

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