風邪の予防に、1日1回の大笑い――泣く、怒るも効果的 「免疫力」を高める科学的方法

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「体温を上げる」「乳酸菌をとる」といった、ちょっとした生活習慣の工夫によって、あなたの身体をウイルスから防ぐ「免疫力」は高まる。熱を作り出す器官である筋肉をつけることも重要だが、アスリートのような過度な運動は逆効果。順天堂大学准教授の竹田和由氏(免疫学)は、「一応の目安としては心拍数100くらい」の適度な運動が良いと説く。

 日本医科大学付属病院の医師、李卿氏は、運動についてこんな方法を提唱する。

「森林浴をお勧めしたい。私自身、森林医学研究会の代表世話人で、4時間くらいかけて森の中をゆっくり歩くのです。距離にすれば5キロほどですが免疫力は大きく向上します。効果を十分得るには一定の木の密度と広さが必要で、首都圏近郊では埼玉県の森林公園。都市部なら明治神宮や新宿御苑もお勧めできます」

4時間くらいかけて森の中をゆっくり歩くことで免疫力が向上する

 森林浴が効果的なのは、リラックスできるからでもある。つまり、ストレスの解消が免疫力を高めることにつながるのだ。その仕組みを、佐賀女子短大名誉教授の長谷川亨氏に、科学的に解き明かしてもらうと、

「脳がストレスを感じると、アドレナリンやノルアドレナリンなど、交感神経を活性化させるホルモンが分泌され、血圧が上がって心臓がバクバクします。すると異変を感じた脳が、体をストレスに適応させようとして、下垂体に溜まっている副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌します。それが血液に乗って、腎臓の上にある副腎に到達すると、その表層部分からコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが発生し、交感神経の異常を抑制しようとします。ところが、コルチゾールの副作用で、NK細胞(ナチュラル・キラー細胞)などの免疫細胞まで活動を抑制されてしまうのです」

 脳が感じたストレスに体が反応する際、ストレスが大きすぎると免疫力が低下してしまうのだという。

■笑って、泣いて、怒って

笑ったり、泣いたりすることが風邪の予防になる

 では、科学的なストレス解消法はなにか。

「チャップリンの映画を観たあとや落語を聴いたあとでストレスホルモンを測り、どのくらいストレス値が変化するかという研究は方々で続けられていて、それらのデータによれば、笑うことで人のストレスが軽減されるのは確かです」

 そう話すのは精神科医で豊岡台病院院長の枝廣篤昌氏である。

「目の前におもしろいことがなくても、体操のつもりで笑ってみることをお勧めします。おもしろいと感じているかどうかは、あまり重要でありません。単純な運動のつもりで、手を伸ばして大声で“ワッハッハ”と笑ってみると、自然と楽しい気持ちが引き出されます。まずは1日1回、大笑いすることを心がけてみるのがいいでしょう」

 笑うことで副交感神経が刺激され、NK細胞が活発になるというのだが、同じ効果は、笑い以外からも得られるそうだ。

「泣くのもストレス緩和に効果があるとされ、コルチゾールなどのストレスホルモンが涙と一緒に流れ落ち、ストレスも体外に排出されるようです。また、怒りの感情をスポーツ観戦などで間接的に発散するのもいい。イライラする相手がいても殴ったりできない代わりに、スポーツ観戦で爽快感を味わうのは、合理的なストレス発散です」(同)

 総合内科専門医で秋津医院院長の秋津壽男氏が、つけ加えてくれる。

「“気合い”だって免疫力に影響があるようです。私の患者さんで、年末年始以外は年中無休で働いている職人さんは、風邪をひいたら店を開けられないという緊張感があって、普段はまったく風邪をひかない。ところが年末年始には決まって風邪をひくのです」

 バカは風邪をひかない、ではない。この職人は、科学的に免疫力を高めるのを怠ったときに、風邪をひいているだけである。

特集「伝染ってしまう前に出来ることがある!『免疫力』をぐっと高める7つの科学的方法」より

週刊新潮 2016年11月17日号掲載

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