小泉進次郎、なぜ批判されない? 失敗に終わった農業改革

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自民党のプリンス

 当選3期、政治家としての初の試練であった。巨大組織・農協の改革を行おうとした“将来の総理候補”小泉進次郎衆院議員(35)。しかし、彼がまとめた農業改革案は失敗に終わった。とはいえ、官邸や党内から批判の声は皆無なのだ。

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「一言で振り返ると、“負けて勝つ”ですかね」

 11月25日、自民党農林部会長の進次郎議員は農業改革案をまとめた後、憔悴しきった顔でこう語った。農水省担当記者が解説する。

「今年の8月、部会長を続投となった彼にとって、最大の仕事が農業改革案をまとめあげることでした。かねてから、“改革の本丸は全農”とし、相当な意気込みを持っていました。しかし、蓋を開ければ、骨抜きと言っていい内容。これで、農協が改革できるとはとても思えません。完敗ですよ」

 改革への風向きが変わったのは、11月11日のこと。

「同じく農協改革を議論していた政府の規制改革推進会議が提言をまとめたのです。1年以内に組織と事業の改革を求め、できなければ第二全農を作る、などといった過激な内容でした」

 これに猛反発したのが、農協と農水族議員。

「小泉さんは先の案を後押しする立場だったのですが、地方の農協関連団体から党に対して、“壊滅させるつもりか”、“もう選挙の応援はできない”などといった苦情が殺到したのです。21日には農協が反対集会を開き、1500人もが集まる事態になりました」(同)

 結果、党が了承した案で、“1年以内”という目標を外すことに。年次計画を作って、自主的な改革を促す尻すぼみの内容となった。

■異例のブリーフ

 だが、不思議なことに官邸や党内から進次郎議員への批判は全く聞こえてこない。さる農水族議員は、

「実際の議論は農林部会の西川公也さんら7名の重鎮議員と共に進めていました。小泉さんは、先輩を立てたのか、自分の意見を声高に主張するようなことはありませんでした。部会でも議員からの異論はナシ。党のスターですから、深い傷を負わせてはいけませんし、よくまとめたと思います」

 政治部デスクが言う。

「進次郎の責任を問う声は出ていません。というのも、彼は次期衆院選では再び、全国を応援演説で回ることになります。もし、彼を批判し、応援に来てくれなかったら大変ですよ。彼から逆に名指しで文句を言われるようなことがあったら、事務所には抗議電話やメールが来るでしょう。それほど、進次郎の人気は未だに高い。ですから、誰も表だって批判する者はいないのです」

 冒頭、紹介した発言のウラはこうだ。

「実は、25日に進次郎が“私の思いを聞いてくれ”と、党本部で記者を集め、異例のブリーフが開かれたのです。そこで彼は“1年という年限を外したけど、みんなの会社だって1年でどうなるか、なんて分からないでしょう”、“年次計画の部分は守れた”と、言い訳していました。しかし、計画を出させるだけで、農協に任せきりでは改革は進みません」(同)

 さらに、吉田茂元首相を渡辺謙が演じたNHKドラマ「負けて、勝つ」を引き合いに出し、

「“あれは最高のドラマだから、是非見てほしいなあ。ふと、この言葉が降りてきたよ”と。正直、負け惜しみのようにしか聞こえませんでした」(同)

 人気の割には、政治家としての実力がまだ伴っていない。ご本人が一番良く分かっているはずである。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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