トランプを操る娘婿・クシュナー氏 正統派ユダヤ教徒であることの影響は

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 トランプファミリーの一員として、ホワイトハウス入りするのか――。娘婿のジャレッド・クシュナー氏(35)は、人事や政策に口出しできるほど、トランプ氏から信頼を得ている。その実像は物静かで、正統派のユダヤ教徒。政治家向きという声も少なくない。

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 クシュナー氏の父親は不動産業で成功した。その両親、つまり祖父母は、ポーランド出身のユダヤ人である。

 在米記者が言う。

「祖母は戦時中、ナチスによって強制収容された。だが、建物の地下から近くの森まで、長い時間をかけ夜通しトンネルを掘って脱出した。反ナチスのパルチザンに加わり、そこで知り合った祖父と結婚。その後、ニューヨークに渡り、クシュナーの父親が生まれたのです」

ジャレッド・クシュナー氏(35)

 クシュナー氏自身は、

「ユダヤ教には、主にオーソドックス、コンサーバティヴ、リフォームという3つの教派がある。彼は、戒律を最も厳しく守る教派で、ある意味、急進的と言われるオーソドックスの信者です」(早稲田大学客員教授の春名幹男氏)

 ユダヤ系の高校を卒業後、ハーバード大に進学。その後、ニューヨーク大のロースクールを出たが、

「高校時代の同級生たちは、『ハーバードに進学できる成績ではなかった』と証言しています。米国では名家の子息だったり、親族がその大学に多額の寄付をしている場合、特別な枠で入学することがある。こういう入学方法は俗に“レガシー入学”と呼ばれる。クシュナーの父親も大学に多額の寄付をしていたようですから、彼もレガシー入学と言われています」(先の記者)

■娘と同様に信頼

 高校在学中から不動産業を手伝い、2008年からは父親の会社のCEOを務めている。国際ジャーナリストの堀田佳男氏が解説する。

「25歳の時、日本円で4500億円という、一個人としては最高額のビル購入取引を成立させたことで話題になった。20代の若造がたった1回の取引で、莫大な利益をクシュナー家にもたらした、と。トランプにとっては、自分の若い頃と重なるのでしょう」

 今年の春、ニューヨークで行われた集会では、

「トランプがクシュナーを登壇させ『彼は政治の世界の方が向いていると思っている。私が娘と同様に信頼している男だ』と紹介していました。実際、選挙戦のオペレーションを任されていたし、重要なスピーチは彼が原稿を書いていた。非常に優秀な人です」

 と、堀田氏もクシュナー氏は政治家向きだと認める。

「トランプは長女のイヴァンカを溺愛しており、彼女は夫に付き従いユダヤ教に改宗した。この関係を見れば、クシュナーの意志がトランプを容易に動かすと想像できます」

 と、春名氏が言う。

「このことについて最も分かり易いのは、トランプのユダヤ人に対する施策です。9月末、彼はイスラエルの首相と会談。その席でこれまでの米政府の方針を転換し、『大統領になったら、テルアビブではなくエルサレムをイスラエルの首都と認める』と約束した。クシュナー夫婦の意志がトランプを動かすなら、新政権のユダヤ人優遇政策は一層加速し、アラブ諸国との関係は冷え込むでしょう」(同)

 トランプ氏を誤った方向に導かないよう祈るのみ。

特集「世界が安堵した裏に『トランプ大統領』の闇」

週刊新潮 2016年12月1日号掲載

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