トランプ政権移行チーム、早くも崩壊 「刑務所服役」をめぐる因縁
トランプ政権が発足するのは来年1月20日。「政権移行チーム」は、それまでに現政権から業務を引き継ぎ、大統領スタッフや閣僚の選考を行う。ところが、早くもこのチームが崩壊したとの話が出ているのだ。
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ドナルド・トランプ氏
政権移行チームの執行委員会は、20名ほどのメンバーで構成されている。
11月11日、まず執行委員長のクリス・クリスティー氏(ニュージャージー州知事)が、副委員長に降格された。すると15日、マイク・ロジャース元下院議員が辞意を表明するなど、不協和音が聞こえている。
「今回『外れてくれ』と言われた人は、クリスティーと何らかの関わり合いがある。その条件を満たす人が5人ほどいて、外れるように言われた……」
ロジャース氏は、こう話しているそうだ。在米ジャーナリストによれば、
「クリスティーが降格された件は、トランプの娘婿、ジャレッド・クシュナー(35)の意向と言われている。彼がトランプを動かし、さらにクリスティー派のロジャースらも辞めさせたとみて間違いありません。クシュナーが父親の仇に報復したと言われ、こちらでは『シェークスピア劇もどきの世代を超えた確執』と報じられています」
“父親の仇に報復”とは、物騒な話ではないか。父親とクリスティー氏の間に何があったのか。
「クシュナーの父親は、ニュージャージーで不動産業を営んでいました」
と、先のジャーナリストが解説する。
「父親は、2005年に脱税や違法献金などで摘発されました。彼は民主党に多額の献金をしていたが、その中で不正があったとして訴追されたのです。裁判では禁固2年の判決を受け、1年で出所しています」
その際、父親を訴追したのが、当時ニュージャージー連邦地検検事正を務めていたクリスティー氏だ。
■「混迷している」
ちなみに、父親はアラバマ州の刑務所に収監されたそうで、
「クシュナーは、週末には父親に面会するため刑務所に足を運んだ。また、父親が彼のために刑務所で作った札入れを、ずっと使っていたそうです」(同)
かなりの父親思いのようである。
「元々米国では、法曹関係者が政治家に転身するケースが非常に多く、上下両院議員の3分の1は法曹界の出身とも言われています。クリスティーも検事時代に様々な事件を手がけたことで、花形検事として脚光を浴び、政界進出の足掛かりにした。クシュナーにすれば、自分の父親を踏み台にして政治家になった“親の仇”に他なりません」(同)
ただし、共同通信元ワシントン支局長で早稲田大学客員教授の春名幹男氏に言わせれば、
「ロジャースは、トランプの安全保障分野の責任者で、クリスティーよりも優秀です。今回はクリスティーとクシュナーの内紛に巻き込まれ、愛想を尽かして辞めたようなものですが、トランプには大きな痛手のはずです」
ロジャース氏自身も、
「(移行)チームは混迷している」
と語っている。ワシントンの政界や学界には人脈が少ないトランプ氏。最初からこんな人事をやっているようでは、この先が思いやられる。
特集「世界が安堵した裏に『トランプ大統領』の闇」