60分以上の昼寝、「糖尿病」「認知症」リスクが上昇 アンチエイジングの第一人者が語る最先端

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■「アンチエイジング」第一人者が語る健康不老の最先端(3)

 ここまで、運動、食事、栄養にまつわるアンチエイジングの最新情報を取上げてきた。最終回となる本稿では、「睡眠」にまつわる知られざる知見を、久保明医師が解説する。

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【睡眠をめぐる意外な話】

1時間以上の昼寝は…(写真はイメージ)

 睡眠に関しては今年、欧州糖尿病学会で面白いデータが報告されました。

 1日に60分以上の昼寝が糖尿病リスクの増大に関連していた、というものです。

 認知症予防のために1日60分以上の昼寝が禁物とされていることは、すでにみなさんご存じかと思われます。さらに糖尿病とも関わりがあるというのですから、看過できない話です。

 アジアおよび欧州での、全21件の研究をもとに計30万人以上の睡眠データを解析したところ、日に1時間を超える昼寝をとっていた人は、そうでない人に比べて糖尿病のリスクが45%も上昇していました。ちなみに、60分未満の昼寝ではリスクの上昇は認められませんでした。

 じつは、残念ながら詳しい因果関係は現段階では不明です。考えうる理由としては、長時間の昼寝をしていた人たちはもともと健康状態がよろしくなく、糖尿病を発症する危険因子を有していたということ。また、長時間の昼寝によって睡眠障害をきたし、夜間に十分寝ることができず、健康にマイナスの影響が出てしまったのではないか、とも考えられます。いずれにせよ、昼寝の時間は1時間を超えない範囲で、ということです。

 また、夜の睡眠についても長時間は避けるべきだと言えます。

 臨床神経医学の分野における権威ある雑誌(※6=掲載媒体名は文末参照、以下同)に一昨年、認知症でない65歳以上の高齢者3857人を12・5年にわたり調査した結果についてのレポートが掲載されました。

 それによると、のちに認知症を患って亡くなったことが確認された92例のうち、9時間以上の睡眠をとっていた群が53・3%と、最も高い割合を占めることが確認されたのです。

 さらに、糖尿病の専門誌(※7)では、高齢期に発症した糖尿病は認知症のリスクを高めるとの報告がなされてもいます。

 すなわち糖尿病のリスクを回避し、かつ認知症を予防するためにも、昼寝や夜の睡眠をあまりに長時間とることは禁物だという結論になるでしょう。

【最後に】

 これまで最新研究の様々な事例を紹介してまいりましたが、一般的に、誰にでも適用できるアンチエイジングのセオリーといったものはありませんし、世の中に溢れる、数えきれないほどの医療、健康情報の中から自身の体にあうものを選択することは、もとより非常に困難です。

 以上をお読みくださって何かしら実践してみようと思い立たれた方も、まずは自分の体をよく知り、自分には何が足りていて何が足りていないか、その度合いを把握したうえで行動していただきたい、と思います。

 健康診断を受けることはもちろん、人間ドックに入ったり、あるいはアンチエイジングドックや抗加齢ドックと呼ばれる、より精密な検査手段を利用したりする手もあります。それによって血管年齢や骨年齢、すなわち血管や骨の老化度や、さらには筋肉量などを知ることができます。

 そのうえでご自身にあった、無理のない健康法を採用、実践なさってください。

 ここでの情報が、読者の方々にとって健康を保つヒントとなってくれることを心から願っています。

(※6)「Neurology」
(※7)「Diabetes Care」

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特別読物「『アンチエイジング』第一人者が語る健康不老の最先端――久保明(東海大学医学部客員教授)」より

久保明(くぼあきら)
1979年、慶応大学医学部卒。88年、米ワシントン州立大医学部動脈硬化研究部門に留学し、帰国後は予防医療とアンチエイジング医学に取り組む。現在は医療法人財団 百葉の会 銀座医院 院長補佐、常葉大学健康科学部教授などをつとめる。

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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