トランプが示唆する「在日米軍撤退」は暴論か?

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普天間基地

 改めて説明すると、在日米軍の年間費用は5850億円。このうち、日本は基地従業員の給料など四千数百億円を負担しており、その割合は74・5%に上る。

 ドイツは32・6%、韓国は40%である。にもかかわらず、トランプ氏は、日本が駐留費を100%負担しない場合の米軍撤退を示唆したのだ。

「日本は米軍の駐留費をすでに十分負担しています。今後、トランプも学習するから問題ありません」

 とは、カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏である。

「でも、彼がああ言っている以上、日本も少しは考えなくてはいけない部分はある。要は、いつまでもアメリカの脛を齧(かじ)っていてはいけないということです。その意味でトランプは良いことを言っている」

 防衛大学校の佐瀬昌盛名誉教授も言う。

「彼は選挙期間中、『日米安保条約は不公平だ』と言っていた。日本が米国に基地を提供する義務を負うのに対し、米国は日本を防衛する義務を負う。確かにそれぞれ義務を負っているが、日米で義務の種類が違う。それを『不公平だ』と感じているアメリカ人が増えているのです」

 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が指摘する。

「米国が仮に『撤退する』と言ったら、どうするか。それに対する答えが用意されていないのは、戦後日本が自国の防衛政策について真剣に考えて来なかったからです。日本は『防衛は米国、経済は自由貿易』ということだけを信じてやってきた。その前提が根本からひっくり返されることが起こるかもしれない。そういう問いを突きつけたのがトランプなのです」

 トランプ氏の暴論に少しは耳を傾けた方が良い。

特集「差別と憎悪の渦から生まれた『トランプ大統領』25の疑問」より

週刊新潮 2016年11月24日号掲載

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