炎上「魚5000匹氷漬けリンク」、壊すのにも一苦労 総支配人が語った“企業努力”

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 生魚5000匹を氷漬けにしたスケートリンクが、「食べ物で遊ぶな」「死者を冒涜するな」などと批判され、閉鎖した。北九州市にある遊園地での出来事だが、そこには涙ぐましい、けれどちょっぴりトホホな“企業努力”が垣間見えた。

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壊すのにも一苦労

 その遊園地、「スペースワールド」は、九州での知名度はそこそこながらも全国的には無名に近く、お世辞にも順調とは言い難い経営状況下にある。1990年開園当初は“宇宙”をテーマにしていたが、最近は“宇宙”に拘ることなく奇抜な企画で集客を試みている。例えば“英会話教材を聴きながら絶叫できるジェットコースター”のように。

 そんな同園の今年のスローガンは《アホはじめます》。夏のプールでは、女性ウケを狙って、“イケメン監視員”を配置したり、水かけショーでコラーゲンをぶちまけたり……。その一環で冬の目玉“アホ”企画に据えられたのが、「氷の水族館」と名付けられた“魚リンク”だったのだ。

「8月下旬、冬の催し物を決める会議で、“スケートリンクを海のようにして、その上を滑って楽しんでいただこう”というアイデアが出たのです」

 と語るのは、同園総支配人の竹田敏美氏。

 一周250メートルのトラック型の屋内リンクは、例年約2カ月を要して、不凍液の上に少しずつ水を張り、厚さ30センチの氷を作ってゆく。

「今年は色素を入れて青い氷にして、上から10センチのところに魚を並べるという手間を加えたわけです。勿論、例年より時間も掛かりました。スタッフ5人で朝から晩まで、骨の折れる作業でした。アイデアも自前ですから、釣り好きなスタッフが中心になって、例えばサンマを円形に幾層も配置して、海の中を周遊しているように見せたり、リンクの入口は黄土色の氷にして貝殻やヒトデを埋め込んでビーチっぽく仕立てたりとか、お客様に喜んでもらおうと色々と工夫を施しました。教育的な要素も入れようと、珍しい魚の横には子供向けの説明文を添えたり。氷の下だけでなく、リンクの周りにも魚がいた方がより海の中を滑っている感じが出るだろうと、魚を入れて凍らせた氷柱も100本ほど用意しました」

■壊すのも一苦労

 アジやエビなど25種類5000匹の魚は、市内の魚市場から。活魚ではなく、外見に難があるなど商品にならない魚だけを仕入れた。ジンベイザメやエイは、実物大に引き伸ばした写真を氷中に埋め込んだ。

 11月12日、遂にオープン。

「例年と比べて、客層は広くなって人数も倍近く増えました。お子さんは魚を指差して大喜び。若い方にも“こんなの見たことない”“きれい!”とご好評でした。特にお叱りのようなものもなかったんですが……」

 それも束の間、オープン2週間後の26日、突如としてネットが“炎上”。竹田氏は、その日の夜のうちに企画の中止を決めた。

「スケート目当てで年間パスを購入されたお客様もいるので、苦渋の決断でした」

 目下、リンクの作り直しに追われる同園だが、実は作るのと同様、リンクを壊すのも一苦労なのだ。

「例年は5月上旬に閉鎖し、場内に外気を入れて氷を溶かすのですが、今の時期だと外気ではほとんど溶けません。そこで風を当てたり、機械で表面を削っている最中です。でも、その奥には魚がいるので、そこからはお湯で溶かすか……年内には再開したいのですが、まだ何とも読めない状況です」

 行く秋や鳥啼(なき)魚の目は泪。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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