シャブは止められないのか!? 「組長の娘」が証言する常用者の実態

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最後は“穴”から―― 常用者の末路

 しかし、そんな中川さんも、次第に覚せい剤の深みにはまり、覚せい剤営利目的有償譲渡・使用で逮捕され、4年半を刑務所で過ごすことに。初めは興味本位で始めた覚せい剤が、彼女の人生から、夫や子ども、社会的信用まで、何もかも全てを奪うこととなった。

 覚せい剤常習者となった当時の模様を、中川さんは次のように回想する。

「シャブ屋してるから、カネには困らんやってんな。当時は、1g(ワンジー)で7万円位になってたしな。しゃあかて、常にビクビクしとったな。(略)

 誰見てもポリに見えんねん。その頃は、もうドロドロや。ポン中(覚せい剤中毒者)しか分からんことやけどな、この時期、うちは血管が潰れてしもうて針が入らんようになってたんや。腕だけやなく、脚の血管からも入れたもんや。

 どうしようもない時は、ウオーリー(仮名)いう専属の女の針師(覚せい剤の注射を補助することで報酬を得る者)を呼んで入れてもらいよったんやが、サウナ入って血管出しても針が入らんときあんねん。もう血みどろになるんやがな、それでもクスリ入れたいねん。

 どないするかいうとな、注射器に逆流した血みどろの液を冷凍して備蓄しておくんや。で、注射器の針をバーナーで炙って、先を丸くしてから、解凍したクスリを、ケツの穴から注入するしか手がないんや。ここまで来たら、シャブ中もかなりの筋金入りや」

人生やり直せるのやったら、やり直したい――

 刑務所を出所すると、彼女を頼ってかつての刑務所仲間が次々に訪ねてくる。しかし一度覚せい剤で服役した者は、なかなか更生できないようだ。

 その理由を中川さんはこう分析している。

「女子の大学(刑務所)はシャブ関係が最も多いな(こいつらは、あまり反省の色がないんが特徴や。パクられたんは運がなかったんや、まあ、他人には迷惑かけてへんからな……そうした言い訳かまして、虫わかしてるん[再び覚せい剤を使用したいという思いを募らせている人]が多い)」

 つまり、はっきりした「被害者」が存在していない分、罪の意識が薄いというのだ。しかし、実際には当然のことながら家族や周囲には多大な迷惑をかけている。

 肉親や近隣社会に助けられ更生した中川さんは、再び薬物に手を出さないと誓った。そして、自らの経験を生かし、覚せい剤で身を持ち崩した人の更生を助けようと頑張っている。だが、そうした努力も空しく、仮釈放中に再び覚せい剤に手を出し、刑務所に引き戻されてゆく者が多いという。

「なしてうちの周りには、こんな人間ばかりなん……嘆きが悲しみに、怒りが虚しさに変わってゆく。考えれば、やはりうちのような人間に寄ってくるのは、うちが悪いからやないか、これぞ、『類は友を呼ぶ』いうもんやないか。自分の過去の愚行の数々が骨身にしみた」

「やっぱ、みんなちゃんとしたいねん。ちゃんと生きていきたいねん。ホンマは。根本は、せやねん。もう、もっかい(もう一回)人生やり直せるのやったら、もっかい頑張ってやり直そう、みんな、そう思うてる。絶対に……でも、やっぱり出来へんねん」

 覚せい剤で全てを失った経験を持ち、覚せい剤中毒者などの更生に寄り添い、伴走支援する中川さんだけに、その言葉は重い。

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