ライムスター宇多丸 映画コメンテーターLiLiCoに映画紹介の悩みをぶつける〈宇多丸×LiLiCo 第1回〉
宇多丸「お、おお。それは厳しい意見ですね……。」
日本のヒップホップシーンを牽引してきたグループ「ライムスター」の宇多丸さんは映画評論にも定評がある。TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の映画コーナーで歯に衣着せぬ物言いと的確な分析で数々の作品を紹介し、映画業界内にも多くのファンを持つ。
宇多丸さんは雑誌「月刊コミック@バンチ」で「ライムスター宇多丸の映画カウンセリング」を連載している。読者から寄せられた相談に宇多丸さんが「人生に悩んだら、映画に訊け!!」と参考になる映画を紹介しアドバイスを送るコーナーだ。11月30日同連載から40超の質問をまとめた単行本『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』(新潮社)が発売された。刊行を記念し、映画コメンテーターのLiLiCoさんに宇多丸さんが逆に悩みを相談するという対談が行われた。
■宇多丸の相談。それは……
宇多丸 この「映画カウンセリング」のコーナーは、毎回読者からの相談に、僕が映画を絡めて受け答えすることになっているんです。そこで今回は少し趣向を変えて、僕の悩みをLiLiCoさんにぶつけてみようかな、と思うんですけど、どうでしょう?
LiLiCo 私でよければ、いいですよ。
宇多丸 ありがとうございます。じつはですね、口癖を直したい。
LiLiCo えっ!?(笑)
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宇多丸 僕は毎週、自分のラジオで「ムービーウォッチメン」という映画評論コーナーをやってるんですけど、そこでしゃべった内容を文字に起こして、公式ホームページに全文アップするようにしたんです。あらためてそれを見ると、自分の口癖が明白なんですよ。「要は」とか「要するに」って言葉なんですけど。
LiLiCo はあ。
宇多丸 前から薄々わかってはいたんだけど、1回の放送中に100回くらい使っているんじゃないかと。僕のしゃべるときのロジックが「○○というのはつまり□□であって、要するにそれは~」という連なりからできあがっているので、ある程度は仕方のないことなんですけど、それにしても「なんとかならねぇかな、コイツ」と思うわけですよ。
LiLiCo ……それ、映画で直せます?
宇多丸 無理だよなぁ(笑)。
LiLiCo ワタシも汗っかきなんですけど、それ映画を見て治せます?(笑)
ワタシは他人に厳しいことを言うこともありますけど、自分にいちばん厳しいですよ。自分に怒って泣くこともあります。
宇多丸 ただね、そういうのを無理やりこじつけて、たとえば汗をかく人がいっぱい出てくる映画を挙げるとかね。そういうことをやるのが、この「映画カウンセリング」のコーナーなんですよ。
LiLiCo なるほどね(笑)。でも、そっかぁ……、原稿を見てそこまで自分で口癖がわかっているなら、直せるハズなんですよ。
宇多丸 まぁ、ねぇ……。
LiLiCo ワタシね、テレビで「ぜひ足をお運びください」が口癖の人がいて、それは自分の中で「うぜぇな」って思ったんです。だから自分では「ぜひ」を抜こう、と決めたんですね。客観的に自分を見れば、なんでもうまくいきますよ。
宇多丸 まさに僕も自分を客観視して「要は」を多用しているのを「うぜぇな」と感じたわけで……。でもこれねぇ、しゃべっているときは夢中になって、コクピットでワーッとやっているみたいに、客観的な視点を持てないんですよねぇ。
LiLiCo じゃあ、そういう人なんですよ(笑)。
宇多丸 そうかぁ(笑)。
LiLiCo ただ、それを変えたいなら、ちょっとずつでも自分を客観的に見なきゃダメですよ。
宇多丸 LiLiCoさんは自分の映画紹介の仕方について、反省したりします?
LiLiCo もうね、「すぐ」ですよ。CM入った瞬間に反省。「CM入りました」って聞こえた瞬間に「これじゃ伝わんねーよ!」とか「ごめんなさい今の全然違う、本当ごめんなさい!」とか平気で言います。カメラは回りっぱなしだから、その映像はかなり撮れてるはずですよ(笑)。
宇多丸 本当にすぐ反省するんだ。
LiLiCo ワタシはスウェーデン人だから、多少のことなら周りが許してくれるかもしれないんです。「まぁ外国人だし、日本語難しいよね」って。でもワタシはそれを自分で許せない。「だったら日本にいるんじゃないよ!」って自分で思いますもん。ワタシは他人に厳しいことを言うこともありますけど、自分にいちばん厳しいですよ。自分に怒って泣くこともあります。だから自分の欠点を自分でわかっていて直せないのは、自分に厳しくないんじゃない?
宇多丸 お、おお。それは厳しい意見ですね……。
対談まとめ・構成:加山竜司
撮影=坪田充晃(新潮社 写真部)