甥の「心臓移植」でっち上げ女 実父が語った動機

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 大メディアが、揃って一杯喰わされた格好である。先日“難病に罹った”男児の手術費用を募るべく伯母が会見を開き、その全てが虚構だったと判明した。一体、何があったのか。詐欺まがいの話をでっち上げた女性の父親に聞くと――。

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本人直筆の謝罪文

 問題の会見は、今月8日に厚生労働省で開かれていた。社会部記者の話。

「36歳の女性が『6歳の甥が拡張型心筋症に罹っている。海外で移植手術を受ける費用があと1億5000万円足りない』と訴えたのです。その子の名を冠した『救う会』を立ち上げ、ホームページでも募金を呼びかけていました」

 が、翌朝報じられると、

「女性から厚労省の記者クラブに『甥が急死したので記事を止めてほしい』と電話があった。クラブ側が経緯を知りたいと要請したところ、夕刻になって今度は『嘘でした』と連絡があり、間もなく本人直筆の“謝罪文”が送られてきたのです」

 男児の生年月日から住所に至るまで虚偽であり、

「実際には、男の子は元気で学校に通っていた。女性は『自分は注意欠陥多動性障害(ADHD)で仕事がなく、生活に困っていた』などと弁明していました」

 知らぬ間に愛息を重病患者にされ、写真まで勝手に使われた弟夫婦は、

「ネットにご家族の情報が拡散してしまい、ショックを受けています。金融機関には『救う会』口座の凍結を要請し、刑事告発についても慎重に検討しています」(代理人の浦部明子弁護士)

 3つの募金口座には、すでに計20万円余りが振り込まれていたという。

■「孫に会えない」

 騒動の張本人に代わり、同居する父親(61)が明かす。

「娘が体調を崩したのは、20歳頃のことでした。専門学校を出て勤めた会社が倒産してから、自宅で暴れたり大声を出すようになったのです。買い物依存症となり、カードや知人からの借金で10万、20万と洋服などにつぎ込んでいきました。時折、思いつめた表情で『今日が支払いの期日なんだ』と言う。そのたび慌てて私が工面してきたのです」

 カードを取り上げても、ネットで後払い購入を繰り返し、一家の暮らしは大いに狂ってしまったという。

「昨年、定年退職して関連会社に移った私の収入は、3分の1に減りました。本来なら退職金で住宅ローンを完済できたのですが、おかげで今も1400万円ほど残っています。娘は医師に後天性ADHDと診断され、6年前には障害者手帳3級を交付されている。その間、仕事に就いても、みな長続きしませんでした」

 今回の“事件”には思い当たるフシがあるといい、

「夏の終わりに、私が家で酒を飲みながら『ローンも返せないし、もう3人一緒には住めないかもしれないな』と冗談半分で口にしたら、娘が『じゃあ私のように自立できない人を支援する基金を作る』と言う。『それはいいかもね』と、つい生返事したのです。それが、あんな会見をするなんて夢にも思いませんでした」

 息子一家はしばしば、孫を連れて遊びに来ていたが、

「これで二度と孫に会えないかもしれません。お振り込みされた方には個別に謝罪してお返ししますが、私はもう会社にいられないし、本当に家を手放すしかありません」

 新たな被害者を生んでしまったのだ。

ワイド特集「木枯らしの門」より

週刊新潮 2016年11月24日号掲載

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