車内化粧CMで注目 「ベッキー損失」を埋める新人女優・仁村紗和
三島由紀夫の『永すぎた春』には、〈現実というものは、袋小路かと思うと、また妙な具合にひらけてくる〉という件(くだり)がある。稼ぎ頭のベッキーが大コケ、所属事務所のサンミュージックとしてはやんぬるかなというところ、期待の新人女優が現れた。「電車で化粧はダメ」と訴えるCMが話題になるなか、ベッキー騒動による損失を埋められるや否や。
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「街で声を掛けられることが一気に増えました」(東急電鉄「わたしの東急線通学日記 My Diary of TOKYU LINES」より)
地方から出て来たばかりの垢抜けぬ女子が電車内でこう呟く。
〈都会の女はみんなキレイだ〉
〈でも時々、みっともないんだ〉
カメラは、手鏡を片手にマスカラを塗る「都会の女」を映し出す。
女子はワンツースリーとリズムを取って立ち上がり、女たちの前で抗議のダンス。かなり奇矯な踊りなのに、都会の女および他の乗客には見えないのか、取りつく島もない。その場面だけ見れば、幽霊がトリッキーな動きをしていると見えなくもない。最後に、
〈車内での化粧はご遠慮ください〉
とメッセージが入り、東急電鉄によるマナー広告の1つだとわかるのだった。
「私の動きはほんまに気持ち悪いですよね。振付けに忠実にやりましたが、振り切った方がいいと判断して、過剰にやったということもありますよ」
と、ハキハキとした関西弁で話すのは、CMに登場する仁村紗和(22)ご当人。
大阪・枚方生まれの彼女は、「東方神起のライブを見るために東京に来た」3年前、20を下らない数の芸能プロダクションから声を掛けられた。その半年後にサンミュージックからデビュー。僅々2年半で出演したCMが20本に手が届く売れっ子ぶりに、同席したマネージャーが、
「普通は半分も受からないオーディションに8割くらい通っている。本番に強いタイプなんです」
と言えば仁村は、
「人懐っこい性格だからですかね」
とあっけらかん。
■眉毛剃ったらほんまに…
ダンスについては、
「インド人みたいな顔をしていて、私とそっくりなお父さんがブラック・ミュージックを好んで聞いていたんです。その影響を受け、中1から始めて高3までの6年間はダンス漬けでした」
彼女が踊れるということから、「スチールのみならず動画広告も」となったそうだから何が奏功するかわからない。
「この前、パンに具を挟んでマヨネーズを塗り、サンドウィッチをつくる人を電車内で目撃しました。“食うだけじゃないのかよ!”と流石に驚いたものですが」
と苦笑する評論家の唐沢俊一氏に仁村評を聞くと、
「紗和さんは、太眉にナチュラルメイクで、イノセントな雰囲気を持った子ですよね。だから、まだ大人の事情に染まっていない時期の女の子、という役に合うのでしょう。いいキャスティングだと思います」
事実、
「眉毛剃ったらほんまに普通の顔。事務所からNGって言われてます」(仁村)
騒動が起こるまで、レギュラー10本、CM9本を抱え、年間9億円を事務所にもたらしていたベッキー。「永すぎる冬」は続くが、「太眉登場」で焦眉の急は切り抜けられそうだ。
ワイド特集「神帰月の超常現象」より