海老蔵主演の「石川五右衛門」 低視聴率の要因は…

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「絶景かな、絶景かな」。大泥棒の石川五右衛門が京都の南禅寺三門上でつぶやくこの決めゼリフ。連続ドラマで五右衛門を演じる市川海老蔵も披露しているが、毎度、見えるのは視聴率の絶景だったから……。

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 実際、海老蔵は、ブログを頻繁に更新しては「石川五右衛門」の宣伝をしている。10月14日に放送された初回の視聴率が発表された17日には、

〈視聴率6・0%ジャスト/テレビ東京さんの目指してたとことピッタリ! よかった、よかった〉

 と喜んでみせる一方、21日には、

〈だいたい2話から視聴率さがるらしいので、4・1%めざせーーー〉

 と、遠慮がちな目標を提示。だが、現実がさらに厳しいとわかった25日のブログでは、

〈2話は残念ながら3・7%と4・1%という予想を下回ってしまった〉

 と音を上げた。もっとも、放送前の10月10日には、

〈目指せ視聴率。3%〉

 と書いたり、6%で喜んでみたりと、そもそもの目標がずいぶん低いが、

「これは視聴率が低くても止めさせないぞ、という牽制だと思いますよ」

 と、テレビ東京のさる関係者が声を潜めて語る。

「いくらうちの視聴率が他局より低くても、金曜夜8時の放送で3%台はみっともない。同じ枠で2014年1月から放送した『三匹のおっさん』は平均視聴率が10%を超えていた。局内には“海老蔵に乗っかったけど失敗したね”という声が上がっています」

 はて、「海老蔵に乗っかった」とは、どんな意味なのだろうか。

「歌舞伎座の中継を狙っていたこともあり、ダメ元で海老蔵にオファーしたらオーケーで、“言ってみるものだ”と盛り上がりました。何をやるかというところで、海老蔵から“石川五右衛門はどうか”と提案されました。こちらは2、3時間の特番一発と考えていましたが、“連ドラじゃないとダメだ”と押し切られ、数字が悪いので実現しないと思いますが、映画化の話もついてきた。脚本や共演者に関しても、海老蔵側がかなり口を出しています」(同)

気合いは入っているが……

■オーバーラップして

 だが、海老蔵の主張もそうは通らない。というのも、

「海老蔵には1回150万円超という、テレ東としては破格のギャラを出していて、その結果、脇役にあまりよい役者を揃えられなくなってしまった」(同)

 とまれ、視聴率の絶景の向こうには何が見えるか。

「期待して見てみたら、あれっ、という感じで」

 と、ライターの吉田潮さんが感想を述べる。

「今、時代劇にチャレンジする精神はいいと思うんですが、せっかく太秦で撮影しているのに、殺陣の迫力が感じられない。カメラワークとかでもう少し迫力や躍動感を出してほしかった。でも、問題は主人公ですよね。一本調子でメリハリがなく、五右衛門というより海老蔵にしか見えない。テレビの時代劇風のアレンジが欲しいのに、終始、歌舞伎調なのも一本調子につながっていると思います」

 だが、別の不幸な事情も絡んでいると話すのは、コラムニストの林操氏。

「ちょうど、奥さんの小林麻央さんの闘病の時期と重なってしまった。それでも、かっちりしたものを見せてもらえれば、“いよっ、成田屋!”となりますが、奥さんの病気が深刻な人がやっている仕事として、この軽薄な五右衛門を見せられるとつらい。時期を考えて放送したほうが、まだよかったと思います」

 さるテレビ局関係者も、

「視聴者はどうしても“海老蔵はこんなことしながら、看病を頑張っているんだ”と感じてしまう」

 娯楽作品に麻央さんがオーバーラップしたら、楽しめないのもうなずける。

特大ワイド「ふりむけば百鬼夜行」より

週刊新潮 2016年11月10日神帰月増大号掲載

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