“北斎作”の西洋画、真贋に議論 オランダの博物館所蔵

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 富士山をバックに、巨大な波に翻弄される小舟の絵からは想像しにくいが──。

 葛飾北斎(1760~1849)が描いた西洋画が確認されたと、新聞各紙、NHKが一斉に報じた。

 文化部記者の話。

真贋を巡っての議論はスタートしたばかり(イメージ)

「事の発端は、10月22日に長崎市で開かれたシーボルト関連の国際学会。そこで、オランダのライデン国立民族学博物館の研究員が、シーボルトが持ち帰った作者不詳の6枚の風景画を、北斎の作品だったと発表したのです」

 その根拠はというと、

「この研究員が最近、シーボルト直筆の目録を発見。そこに、これらの絵について、『北斎が我々のスタイルで描いたもの』という記述があったのです。また、作品ごとの特徴も書かれていて、その内容も作品と一致したことが決め手となりました」(同)

 この発表に、葛飾北斎研究家の永田生慈氏は首を傾げる。

「作品を細かく見ていないので正確な事はわかりませんが、目録に書いてあったからというだけでは北斎の絵と断定はできません。浮世絵の専門家が、時間をかけて彼の他の作品と比較検証する必要があります」

“シーボルトの目録”自体も、

「そのまま鵜呑みにするのは危険です。というのも、シーボルトは北斎の事を、書物の中で“宮廷画家”と記述しています。しかし、ご存じの通り北斎は、民間の絵師。シーボルトが北斎と直接会っているかどうかも、結論が出ていない。商館の医師として来日した際、北斎の弟子や別の人の作品を、北斎画だと言われて購入し、そのまま目録に記述した可能性もある」(同)

 実はこの研究員、以前にも作者不明の15枚の日本風俗画を、「シーボルトが目録に書いている」という理由で、北斎作と断定したことがある。しかしこれらも、専門家による裏付けはいまだになされていない。

「しかも今回発表された作品群は、これまで彼が発表した『北斎作と思われる絵』の中でも一番北斎らしさから遠い。北斎作であると決めつけるのは、早計と言えるでしょう」(同)

 北斎か否か。その真贋を巡っての議論は、まだ始まったばかり。

週刊新潮 2016年11月3日号掲載

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