銀行各社が手数料を“改悪” マイナス金利で糊口しのぎ
自分の預金を引き出したときや、ローンを繰り上げ返済したりするときにいちいち発生する“手数料”。はした金とはいえ、モヤモヤ感を禁じ得ない方は少なくないだろう。
誰かに金を送る。たしかに“手数”は掛かるのだろうが、ATMにできる長蛇の列に並び、あれこれとキーを操作するのは我々だ。ネットバンキングも然り。いくつもパスワードを入力させられ、歪んだ文字を読み取らされ……。“こっちが手数料を貰いたいよ!”と毒づきたくなる。
塵も積もれば…(イメージ)
さて、そんな銀行の“手数料”にじわじわと変化が起きている。
三井住友銀行は、10月20日まで、自行ATM平日時間外手数料及びネットでの自行宛振込手数料が「預金残高10万円以上は無料」だったが、その措置を取り止めた。
ゆうちょ銀行も、「何度でも0円」だった行内送金手数料を、10月1日から「月4回目以降有料」に“改悪”している。
地銀・信金も、この秋から続々と、窓口やATMでの手数料を値上げし始めた。
表向き料金は変わらないが、利用者にとっては酷な制度変更も目立つ。各行で“マイレージ”“ポイント”など呼称はさまざまだが、所定の条件をクリアすれば手数料等を減免するこれらの制度における“ハードル”をグイッと上げているのだ。
例えば、12月から変更されるみずほ銀行の新制度は、学生やオリコカード利用者など一部顧客への優遇もあるものの、これまで「預金残高10万円以上」だった手数料無料条件が一気に「30万円以上」に引き上げられ、多くの利用者を落胆させている。
■付け入るネット銀行
「背景には“マイナス金利”があります」
と、元銀行マンで楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏が分析する。
「預金を集めて貸し出し、その利ざやが銀行の稼ぎとなります。マイナス金利になると、逆に預金者が金利を払うべきなのですが、さすがに銀行はそれを要求できない。そこで、手数料を上げることで、利ざやを確保し、実質的にマイナス金利に対応しているのです。また、企業に融資する際に生じる“信用コスト”が利ざやと見合わなくなるわけですが、手数料を取ることに関しては、銀行にリスクは発生しない。それでますます手数料値上げに拍車が掛かっているわけです」
そこに付け入るのが、ネット銀行である。
リアル店舗を持たないネット銀行は人件費などコストを浮かせることで、高い預金金利、安い手数料を実現している。コンビニATM手数料は預金残高にかかわらず無料、セブンイレブンなど特定のコンビニに限れば回数も無制限だったりする。無論、各行が鎬(しのぎ)を削るフィンテックにも一日の長がある。
思えば、スーパーゼネコンが戸建て住宅を建てることはない。それと同様、メガバンクが家計の財布代わりになるのはいささか無理があるのではないだろうか。
「いや、住宅ローンの審査など、個人のお客にとってもメガバンクとの付き合いが意味を持つことはあります。リアル銀行にとっても、お金持ちや、投資信託など手数料が高い商品を買ってくれる客には人件費を掛けてもいい」(同)
たかが手数料、されど手数料──。