安倍官邸の外側にだけ吹く「ドーナッツ解散風」 総理の思惑は
公明党の山口那津男代表と井上義久幹事長が「全議員が一層、構えを強くしなければならない」と発言、自民・二階俊博幹事長も「選挙の準備に取り掛からない人がいるとすれば論外」と言い始め、永田町には早期解散の風が吹いている。さらに、来年1月に予定されていた自民党大会が、安倍総理の指示で3月に延期との情報も。12月15日に日ロ首脳会談が入っている日程を鑑みれば、「年末から年明けの解散しかないと読み解かざるを得ない」(政治部デスク)というが……。
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解散するならいつなのか?
おかげで、民進党を始めとする野党も完全に浮き足立っているという。
「10月19日、馬淵選対委員長は民進党本部で比例復活で当選した約20名の議員に訓示を垂れました」
とは、民進党関係者。
「彼の見立てでは、12月19日解散、1月3日公示、15日の投開票。これが直近でのスケジュールだそうです。これなら3月末までに17年度予算の成立も可能だし、ズレ込んでも2月中に選挙があるだろう。厳しい情勢なので、皆さん頑張ってほしい、と発破をかけていました」
すでに野党は臨戦態勢に入っていると考えて良い。
ところが、肝心の官邸は、
「解散の空気は、全く伝わってきません」
そう話すのは、官邸関係者である。
「今井総理秘書官は、周囲に『安倍さんからは、解散の雰囲気が全く感じられない』と話しています。二階さんが解散風を吹かせていることについては、『いつ選挙があってもいいように若手を教育している』と解説していました。他の総理側近からも、解散に前のめりになっている発言は聞こえてきません」
菅官房長官に至っては、10月16日の講演で、
「解散風は偏西風みたいなもので、1年間吹きっ放しだ」
と発言し、早期解散について慎重姿勢を見せた。
■自民党は議席を失う
公明党関係者は、
「菅さんは、公明党の某幹部に『最近は解散、解散となりすぎている。少し火消しをした方が良い。今度講演するので、そこで火消しするつもり』と語っていた。そして、16日の偏西風発言へと繋がるのです。要するに、菅さんの発言は咄嗟に出たものではなく、解散風を消すという意図のもと計画的になされたものです」
政治部デスクも、
「新潟県知事選では自民党候補が野党候補に6万票の差をつけられて敗れた。菅さんは、この結果について『尋常じゃない』とショックを受けていたそうです」
憲法改正の発議には、衆参で各3分の2以上の議席が必要である。衆院について言えば、3分の2は317議席で、改憲勢力は現在、342議席を占める。
「菅さんは、いくら野党共闘が進んでいないとはいえ、今解散したら自民党は30~40議席減らすとみています」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)
3分の2を失っては、安倍総理が悲願の憲法改正ができなくなるというのだ。
■“2島先行返還”で下がる支持率
自民党、公明党、野党の間で解散風は吹いているものの、官邸からは解散の「か」の字も聞こえて来ない。官邸の外側にしか吹いてない「ドーナッツ解散風」ということになる。
その裏事情を語るのは、ある官邸関係者。
「日ロ首脳会談で、日本側は歯舞群島と色丹島の2島先行返還と経済協力とで何とかしたいと考えています。しかし、実際、交渉はかなり難航していて、ロシア側は歯舞、色丹だけならOK。国後、択捉との間に国境線を引くと言ってきている模様です」
1972年、沖縄以来の領土返還となれば、世論も歓迎ムードになる気もするが、
「元々、日本の基本姿勢は4島返還なわけですからね。2島だけでお終いなんてことになったら、批判が出るのは目に見えています。これでは、内閣支持率がどれくらい下がるか予想もできません。安倍総理は、この辺りで頭を抱えていると言われています」(同)
11月19、20日には、ペルーでAPEC首脳会議が行われる。ここで安倍総理はプーチン大統領と会談。12月15日の本番前の下交渉を行うとされる。
■「生前退位」も影響
「実は……」と続けるのは、安倍総理の側近。
「安倍さんは、来年の秋以降、場合によっては18年の選挙も選択肢にあったようです。その際は、憲法改正も一緒にやって、国民の信を問う。ところが、天皇陛下の生前退位の問題が浮上し、そのシナリオが狂った」
現在、政府は天皇陛下の生前退位を規定する特措法を設けるべく、有識者会議を開いている。
「特措法は、何とか来年の通常国会で成立させたいとしています。今上陛下から皇太子への皇位継承では大嘗祭が最も重要で、18年11月に行われる予定。大嘗祭の準備には少なくとも8カ月の期間を要し、それまでに皇太子が『三種の神器』を継承する『剣璽(けんじ)等承継の儀』や今上陛下の退位の礼も行われます。とすると、大嘗祭までに1年の準備期間が必要になる。皇位継承の諸々の行事をやっている最中に総選挙はなかなかできないでしょう」(同)
安倍総理にとって、解散時期の選択肢は意外に少ない。やはり、12月15日の日ロ首脳会談が大きな山場となりそうである。
特集「首相官邸の外側にしか吹いてない『ドーナッツ解散風』」より
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