「支持政党なし」が提訴 “1議席獲得していた”根拠を代表語る

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 政党名を聞く限り、半分冗談かと思ったら、いやいや大真面目なのである。先の参議院選挙で獲得議席ゼロに終わった「支持政党なし」の佐野秀光代表(46)が、自民党議員の当選無効を求め、東京高裁に提訴した。つまり「本来、支持政党なしは1議席獲得していたはずである」と。

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 参院選では、紛らわしい名前が注目されたものの、結局比例区で64万7000票しか獲得できなかった支持政党なしだが、

「私がこの党を立ち上げたのは2013年7月。当初から総務省の対応はおかしな点が多かった」

 と振り返るのは、佐野代表である。

「14年12月に行われた衆院選で、比例北海道ブロックから出馬した際、私は総務省に候補者の届出書を出しに行きました。その際、〈略称〉の欄に『なし』と書き、一度はOKをもらった。ところが、後から選管より“やはり略称『なし』はやめてほしい”と言われ、結局略称は『支持なし』になった。では、『なし』と投票用紙に書いた場合を聞くと、『各開票所が判断することになる』と言われました」

 今度の参院選でも、当初〈略称〉は「なし」と届け出た。が、結局、前回同様認められず、「支持なし」になったという。

「ところが、参院選の後、うちのスタッフが全国の地方自治体に『なし』と書いてあった投票用紙の扱いについて問い合せると、『総務省の指示に従って無効にした』と回答した自治体が少なくありませんでした」

 今回の裁判について説明してもらうと、

「簡単に言えば、比例代表で最後に当選した自民党議員の当選を無効にしろというもの。裁判のポイントは『無効票』の扱いです。無効票にも色々あって、白票だったり、適当な事を書いて無効になる『他事記載』など種類がある。そのうち『なし』と書かれた票は『支持政党なし』への有効票になるのではないかというのが一つの論点なんです」

「支持政党なし」のポスター。代表の佐野氏はまだまだ諦めていない

■少なくとも50万票

 今回、支持政党なしの選挙スタッフの一人が、横浜市港北区の開票所で開票立会人として参加したという。

「彼の証言によれば、無効票の中に『なし』と書かれた票がおよそ1500票あったといいます。なお、港北区全体の無効票は4038票。つまりその37%が『なし』と書かれた票だったことになります」

 比例区の無効票は207万5189票。うち37%が「なし」と書かれた無効票だとすると、約76万票あったと考えられるという。

「少なく見積もって、仮に『なし』が50万票あったとする。これを我々が今回獲得した64万7000票に足すと、計114万7000票となり、比例で最後に当選した自民党議員の約105万票を優に超える。つまり、最後の48議席目は『支持政党なし』の議席だったことになります」

 むろん、総務省側にも言い分がある。

 例えば、「なし」票は支持政党なしの票であるとの主張に対しては、投票記載台上には名称を「支持政党なし」、略称を「支持なし」と明記した掲示がなされていたので、敢えて「なし」と書くとは思えないと反論する。

 また、「なし」票が50万票あるという主張についても、何ら根拠のない憶測に過ぎないとバッサリ切って捨てる。公選法に詳しい中村和洋弁護士はこう語る。

「支持政党なしには、本当に支持する政党がなくて『なし』と書いた人を取り込む、所謂“便乗”で作ったようなアンフェアな印象を持たれる可能性がある。裁判所は社会通念上の観点を踏まえ判決を下すので、支持政党なしの主張は退けられる可能性は高い。ただし、比例票の『なし』は『支持政党なし』の有効票とすべきだという言い分は、一理あると評価されるかもしれません」

 転んでもタダでは起きない佐野代表。判決は11月16日に下される。

ワイド特集「答えは風に舞っている」より

週刊新潮 2016年10月27日号掲載

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