三浦九段の疑惑、使用したと見られるソフトで検証してみると…
将棋界のトップクラスに君臨する三浦弘行九段(42)が真剣勝負の最中、こっそり将棋ソフトに頼るなんてことはにわかには信じられない。だが、日本将棋連盟の幹部によれば、三浦九段が使っていたと見られる将棋ソフト「技巧」で確認してみると、終盤における棋譜と93%の一致率を見せたという。
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そもそも、将棋界に大きな波紋を生じさせた将棋ソフトなるものは、いつから世の中に出てきたのか。
世界初の将棋ソフトは1975年、のちにコンピュータ将棋協会会長となる、早稲田大学の瀧澤武信教授をメインプログラマーとしたチームによって開発された。とはいえ、将棋好きの小学生相手にさえ、手も足も出ない有り様だった。
しかし、将棋ソフトはそれ以降、急激な進歩を続けているという。
■三浦九段の“疑惑”時期と一致
公立はこだて未来大学複雑系知能学科の松原仁教授が解説する。
「将棋ソフトがこれほど進歩したのは“機械学習”、すなわち、膨大な棋譜を読み込み、そこに潜むパターンをプログラム自身が見つけて、将来を予測する機能を身に付けたからです」
その結果、2013年の将棋電王戦では、5人のプロ棋士が5つの将棋ソフトと対戦し、1勝3敗1分けで完敗を喫した。そのとき、5人目の“大将”として登場したのが三浦九段で、東大の研究チームが開発した「GPS将棋」というソフトに屈している。三浦九段は22歳のとき、羽生善治王座を棋聖戦で撃破した経験を持ち、当時からトップ10人の棋士しか属せないA級だったため、その敗北は衝撃的だった。
「現在、最強の将棋ソフトと言われているのが、東大将棋部に在籍中の学生が開発を始めた『ポナンザ』です。今年のゴールデンウイークに開催された、将棋ソフト同士が対戦する『世界コンピュータ将棋選手権』では、『ポナンザ』が1位に輝き、2位だったのが今回問題になっている『技巧』です。その大会の2次予選リーグで、『技巧』は『ポナンザ』を破っていることから、同等の強さを持つと言われています」(同)
「技巧」の開発者は、東大ロースクール出身という異色の経歴を持つプログラマーだという。
そして、「技巧」は今年の5月末に、一般向けにもフリーソフトでネット上に公開され、さらに、7月初めからは、アンドロイド用スマホのアプリとしてダウンロードできるようにもなった。
つまり、三浦九段がスマホでの将棋ソフト不正使用を疑われるようになった時期と重なるのである。
■3800から4000のレイティング
それにしても、プロ棋士がふと魔が差してしまうほど、「技巧」の強さは魅力的なのだろうか。
「将棋の強さを測る指標に、チェスと同じく“レイティング”というものがあります」
と語るのは、将棋ジャーナリストである。
「連盟の公式サイトである『将棋倶楽部24』では、将棋ソフトやプロ棋士、アマチュア棋士らがネット上で対戦した結果に基づき、“レイティング”を弾き出している。昨年の12月、『ポナンザ』は、3455という数値を記録しました。将棋ソフトは“機械学習”し、日々進化し続けるため、現在は3800から4000という数値に達すると推測されている。『技巧』も、同レベルだと見られています」
一方、生身の人間についてはどうか。
「『将棋倶楽部24』は、匿名で参加するため、素性はわからないものの、12年の12月に記録された3312が最高値です。トップレベルのA級棋士でも3000程度で、職場や学校では負けなしの初段レベルで約1600。だいたい600以上の差がつくと、相手に勝つのは奇跡と言われています」(同)
三浦九段が誘惑に駆られるほどに将棋ソフトは強力だったのである。
検証してみると…
■実際に検証してみると…
そこで、本誌(「週刊新潮」)は、三浦九段の疑いを持たれた棋譜と『技巧』の指し手がどれくらい一致するのか確かめるため、「技巧」をダウンロードし、検証してみることにした。
その結果は、驚くべきことにと言うべきか、予想通りと言うべきか……。
まずは、疑惑の発火点となった7月26日の久保九段との一戦。対局の最後の3分の1にあたる“終盤”に限ってチェックしてみると、三浦九段の指した手と「技巧」との違いはわずか1手のみで、その一致率は93・3%。ちなみに、相手の久保九段の一致率も確認してみたら、60・0%だった。
さらに、7月11日の対戦でも、三浦九段の一致率は92・8%と非常に高いもので、相手の郷田王将は53・3%に過ぎなかった。
検証の結果、三浦九段以外の棋士では、60%前後の域を出ることはなかった。
いかに三浦九段の数字が突出しているかが分かろうかというもの。
確かにこれでは、棋士仲間から疑いの目を向けられても仕方がない。
特集「次の一手をコンピューターに頼った? 『三浦弘行』九段と93%一致した問題ソフト」より
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