堤幸彦、ドラマ大コケでTBSに見限られる 映画版から撤退

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 ひところは「ン」で終わるタイトルがいい、とされていた――。そんなゲン担ぎが頭を過(よぎ)るほど大コケだったのが、演出家・堤幸彦(60)がTBSと組んだ「神の舌を持つ男」。同時並行して撮影し、堤が監督を務める映画版が12月に公開予定だが、TBSが臆病風に吹かれ見限ったという。

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映画版から撤退

 冒頭の一節は、「ふぞろいの林檎たち」などでTBSドラマ黄金期を支えた大山勝美氏のエッセイから。〈「大岡越前」のごときは、本当は「大岡越前守」と呼ぶべきであろう。だがゲンをかついで「守」をはぶいて〉、ヒットしたと続く。

 先達の顰(ひそみ)に倣うべきだったかどうかはともかく、堤のショックは大きく、自虐的なPRハガキを9月半ばに各方面に配布していた。

〈私が原案・演出を致しましたテレビドラマ「神の舌を持つ男」は、20年来の構想を実現させて頂いたにもかかわらず、類稀なる低視聴率を記録し、関係各社の皆様には多大なるご迷惑をおかけ致しました〉

 そこには、堤が掌を合わせた「ごめんなさい」のイラストも付けられている。

「これだけコケれば、それくらいしなくちゃという堤の心意気や良し。もっとも、笑えなかったですけどね」

 と、ハガキを受け取った芸能デスク。今夏放送されたこのドラマは、過去の「ケイゾク」「SPEC」同様、堤演出+TBS製作の“黄金バッテリー”で期待が高かった。が、初回視聴率が6・4%、最終回も4・8%と、超低空飛行に終わっていたのだ。

「1話完結型のミステリーなのですが、ドラマというよりはむしろ豪華なコント番組として開き直って観るべきだったと思います」

 と苦笑するのは、本誌(「週刊新潮」)で「TVふうーん録」を連載中のライター・吉田潮氏。

「舌で舐めただけで物質の成分がわかってしまう主役の向井理は、三助として貧弱なフンドシ姿をさらすところがかわいく見えないこともない。ですが、ペロッと舌を出して、死体を舐めたりするのが気持ち悪いという評価もありました」

■「非常に珍しい」

 そればかりか、

「中身がない代わりに小ネタギャグ満載。2時間サスペンスや『八つ墓村』などの横溝正史映画が元ネタになっていて、普通の若い人には理解できないでしょう」

 ところで先のハガキには、

〈松竹株式会社様の奇特なるご厚意により映画版を日本全国で公開する運びとなりました!!〉

 ともあるが、二人三脚で進めて来たはずのTBSの名が製作チームに見当たらないのだ。TBSは、

「ドラマのプロデューサーを務めた弊社社員が映画でも参加しています。撤退という事実はございません」

 と撥ねつけるが、製作幹事・配給の松竹に聞くと、

「TBSが製作に入っていないのは事実です。映画版で撤退されるケースは非常に珍しいのですが……」

 TBS関係者が後を受け、

「売上は求めないから割当ての製作費も全額は出さないということ。製作費を考えれば20億円の興行収入がボーダーライン。到底越えられないと踏んだわけです」

 三島由紀夫『禁色』に、こうある。

〈帆船を航路の上に押しすすめる順風は、それを破滅にみちびく暴風と本質的には同じ風である〉

 ならば、逆もまた真なり。

ワイド特集「答えは風に舞っている」より

週刊新潮 2016年10月27日号掲載

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