「頭の悪い女子大生は“モノ”扱い」東大集団わいせつ事件、最後の一人も執行猶予付き判決
事件現場となったマンション
今年5月に起きた東京大学生による集団わいせつ事件で、10月25日、起訴された最後の一人、松本昂樹に対する判決が言い渡された。懲役2年の求刑に対し、判決は懲役1年10月、執行猶予3年というものだった。
松見謙佑、河本泰知の2人は9月20日に判決公判があり、それぞれ懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)、懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)が言い渡されている。3人そろって執行猶予付きの判決となったわけだが、行為の悪質性を考慮して松見、松本、河本の順で刑の重さに差が出たかたちだ。
東京大学は、3人の処分の内容を「発表する予定はない」(同校広報)と言っていた通り、沈黙を守っている。
この松本の裁判中に慶應義塾大学生による輪姦事件が起きたが、この事件はそれと質的に大きく違う。東大生たちはレイプにまでは及んでいない。最初はわいせつ目的だったが、徐々に被害者をいたぶること、辱めること、オモチャのように扱ってその体をただ弄ぶことに熱中していったのだ。
新潮45・11月号に掲載された傍聴ライター・高橋ユキ氏による記事「東大生集団わいせつ事件 『頭の悪い女子大生は性的対象』という人間の屑たち」では、この事件の特異性が仔細にレポートされている。
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■性犯罪者となった東大生の所業とは
事件を振り返っておくと、今年5月10日、東大生で作る「誕生日研究会」のメンバーは午後8時に池袋駅で待ち合わせ、近所の居酒屋でコンパを行った。最初は5人だったが五月雨式に人が増え、男6名、女2名となった。この場でも羽目を外した振る舞いはあったが、問題はその二次会だった。
午後11時30分に一次会が終了したあと、一人を除いて同じ「誕生日研究会」メンバーの河本泰知が待つ、巣鴨にある彼の下宿へと移動する。そこで男たち5人はターゲットを一人の女性に絞り、彼女を裸にして徹底的に辱めたのだった。記事にはこうある。
「松見は悲鳴を気に留めることなく、さらに川岸さん(仮名)の背後から胸を揉み、腰に手を回してズボンを脱がせようとした。川岸さんは身を捩ったりズボンをつかむなどして抵抗したが、松本が川岸さんの前からそのズボンをつかんで引っぱって、2人で無理矢理下着ごと脱がせてしまう」
松見謙佑と部屋を提供した河本泰知は、東大工学部システム創成学科4年生、松本昂樹は同学科から進学して大学院の1年生である。示談が成立して起訴されなかった2人も、松本と同じ大学院生だ。
彼らは代わる代わる胸やお尻を触り、ドライヤーで陰部に熱風を当てたり、割り箸で肛門をつつくなどもした。レイプはしなかったものの、女性の体を好き放題、蹂躙する行為を繰り広げた。記事では、裁判での供述や捜査資料をもとに1時間に及ぶ凌辱を丹念に描く。
それにしても、なぜ彼女だけが狙われ、このような目にあったのか。裁判では思わぬ事実が明かされた。被害者はある時点まで松本と付き合っており、その松本が彼女の全裸写真をメンバーに見せたり、その日も「こいつオレのセフレだから何してもいいよ」とメンバーに言っていたというのだ。記事には松本の供述調書の一部が紹介されている。
「自分のポジションは被害者を泥酔させる目的で率先して飲ませる雰囲気を作り煽ることだった。焼酎のコップを無理矢理被害者の口に持って行って飲ませたり、被害者の胸がGカップと煽り、松見が触るなどしていた。山手線ゲームで知らないお題を設定して飲まないといけないように仕向けたりした」
■頭の悪い女子大生は「モノ」扱い
筆者の高橋氏は、以下の供述をひきつつ、事件の背景にある東大生の思い上がったエリート意識を指摘する。
「私の女性観ですが、(近づいてくる女性は)個人的に私を好いてくれるのではなく、下心があって近づいているのではないかと。そういう人たちに対して苦手意識、軽蔑する気持ちがありました」(松本の被告人質問)
「仲間の間で女性をモノ、性の対象として見て人格を蔑んでる考え方が根本にあったと思思う。大学に入学してサークルなどで他大学の子と接して、彼女らはアタマが悪いからとか、バカにして、いやらしい目でばっか見るようになり……という、男たちの中でそういう考え方が形成されてきたように思います」(河本の被告人質問)
さらに彼らがわいせつ目的で作ったこの「誕生日研究会」や、その母体となった、東大の3、4年生が他の女子大の1、2年生を勧誘して作る“本郷系サークル”のしくみなどを説明しながら、彼らが他大学の女子大生とどのような付き合い方をしていたかを浮き彫りにしていく。
記事ではサークルの周囲の人々の証言により、彼らが女子大生をランク付けし、被害女性を最低ランクの扱いとしていたことも白日の下にさらしている。