生まれ変わる熱海駅に不評…「それじゃ意味がない」

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 熱海と言えば、尾崎紅葉の「金色夜叉」。許嫁のお宮に心変わりされ、主人公の貫一が足蹴にする場面の舞台として有名であるとともに、都心からほど近い温泉地としても知られている。その玄関口の熱海駅が、今秋、生まれ変わるのだが──。

 地元の記者が言う。

「旧駅舎は1925年の開業からのもので、老朽化が激しく、建て替えることになったのです。同時に51年に駅舎の隣に建てられた、3層2階建の駅ビルも、新しい建物にすることになりました」

似たような駅舎ばかりに…(JR東日本プレスリリースより)

 2014年に始まった新築工事は、完成間近。すでに新しい駅舎は利用されているが、駅ビルも「ラスカ熱海」として11月25日、オープンするという。

 海と山をイメージした駅ビルは、地上3階建でガラスを多用。三角屋根の旧駅舎から漂っていた、ノスタルジックな雰囲気は皆無だが、代わりに清潔感は溢れんばかりだ。

 入居予定のテナントは、36店舗。特産品の干物屋や土産物屋などの地元業者が入る一方で、100円ショップやドラッグストア、さらには、住民や別荘の利用者からの要望が強かったという理由で、市が誘致をプッシュした高級スーパーの「成城石井」などなど、都会で馴染みの店も多数入る。

「それじゃあ、まるで意味がないじゃないですか」

 と声を上げるのは、庶民文化研究家の町田忍氏だ。

「近頃は、地方のどこに行っても、主要な駅は同じようなガラス張りの建物ばかり。お洒落で近代的ですが、どれも没個性です。熱海と言えば、今でも秘宝館があったり、温泉場にスマートボールがあったりして、どこか泥臭くて、レトロで懐かしい趣がある場所。だからこそ、わざわざ出かけていくわけです」

 さらに、シンガーソングライターのなぎら健壱氏も、

「こちらが悪いと言っても向うにしたら理由があるのだろうから、賛成か反対かは言えない。けど、利口なのは、らしさを出すほうだと思うよ。駅に降りて温泉まんじゅうの湯気を見れば“おっ、来たなぁ”といった気にさせられるじゃない。それが、駅を降りて、いつもと同じじゃ、がっかりするよ」

 物珍しさがあるうちが華。他に目移りするお洒落スポットが出来たら……。貫一のようになりかねない?

週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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