「中国の危機を認識せよ」 百田尚樹のニュース放談(3)

国際 中国

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百田尚樹さん

■隣国を敵視するなという人たち

 さらに百田尚樹氏のニュース放談をお届けする。
 今年2月、刊行された百田氏の小説『カエルの楽園』は、日本の安全保障環境を風刺したストーリーに加えて、中国船が大量に尖閣に押し寄せる事態や、トランプ大統領候補の台頭まで、最近の出来事を予言したかのような描写も大いに話題となった。一方で、「いたずらに隣国を敵視している」と拒否反応を示し、批判する人もいるなど、同作品は賛否両論を呼んでいる。

 しかし、実際に中国軍による日本の領海や領空侵犯が日常化しているのは事実である。あまりにも日常化しているので、段々国民はもちろんメディアも麻痺してきたようだが、このような状況を百田氏はどう見ているのだろうか。

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 明らかに中国、中国軍は意図を持って日本の領海や領空を侵犯してきています。また、北朝鮮の核開発は進む一方で、朝鮮半島の緊張も増しています。

 私は、CSやネットで放送している番組「真相深掘り!虎ノ門ニュース」で、なるべく中国船の問題を扱うようにしているのも、この危機感からです。普通ならば、新聞やテレビなどのマスメディアもその危険性を伝えるべきなのに、危機感が本当にありません。

 それどころか、中国の危機を訴えると、「そんなことを言って、危機を煽るな。それが危険だ」といった理屈を言う人もいるわけです。

 結局、戦後70年にわたって、「とにかく悪かったのは日本なのだ」と刷り込まれてきた影響、洗脳が今でも続いているのです。これが『カエルの楽園』で描いた状況です。

 この作品に登場する平和ボケのカエルは、「三戒」という教えを信仰していました。「(他国の)カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」です。

 舞台となるナパージュという国では、この「三戒」の影響力が強烈です。そのため、「このままでは悪いカエルに侵略されるのではないか」という危機感を訴えるマトモなカエルに対して、「そんなことを考えるな。隣国のカエルを信じろ」と平和ボケのカエルたちが説教をするのです。

「昔悪いことをした私たちが悪いのであって、隣国は決して悪くない。まず彼らを信用しなくてはダメだ。その信用から平和が生まれるんだ」

 という理屈ですね。

 明らかに間違っているんですが、これには先ほど言った戦後の洗脳に加えて、日本人の言霊信仰も関係しているように思えます。「悪いことを口にしたり、思ったりしてはいけない。それが現実化するから」というものです。

 この信仰ゆえに、私たちは会を「閉める」と言わずに「お開き」と表現します。川原に生えている「葦(あし)」は「悪し」につながるから「よし」と呼びます。「するめ」も「する」が縁起が悪いということで「あたりめ」と言ったりしますよね。

■戦争や原発事故を反省するのなら

「中国が攻めてくるかも」「北朝鮮が暴発するかも」といった発言に対して過敏な人の中には、こういう思考法を持っている人が少なからずいるような気がします。

「悪いことを言うと、悪い事態を引き寄せる」と。

 しかし、言うまでもありませんが、これは危機管理で最も採ってはいけない思考法です。最悪の状況を考えて、備えることが危機管理であり、安全保障の根本なのですから。

 かつて原発で、事故対策でロボットを備えておいてはどうか、というアイデアがありました。ところがこれは真面目に議論される前に消されました。なぜなら、そういうことを具体的に進めようとすると、原発を危険視する人たちから「事故を修復させるロボットを導入するということは、事故が起きるという前提があるからだな」「原発は安全というのは嘘だったんだな」という意見が出されるからです。それで事故時に作業するロボットを作れなかったんです。

 軍隊でも同様で、かつての第二次世界大戦時に米軍にはダメージ・コントロール要員が相当数、戦艦などに配置されていました。もしも攻撃などで損傷を受けたら、彼らが修理にあたるわけです。ところが、日本海軍の艦艇には一人もいなかった。「そんなものを用意するというのは、損傷を受けるということなのか。けしからん」という思考法です。

 この思考法で、日本は戦争に負け、原発事故も起してしまいました。

もういい加減、現実を直視すべきです。

デイリー新潮編集部

2016年10月19日掲載

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