豊洲移転で儲かったのは誰なのか? 石原元知事、ゼネコン、東京ガス…

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「その事件によって、誰が一番得をしたか」――。犯罪捜査で黒幕を炙り出すための鉄則は、最大受益者を探すことにある。それに照らせば、築地市場の豊洲移転にかかる総事業費が6000億円超もの巨費に膨らんだカラクリも見えてくるにちがいない。濡れ手で粟で儲けた連中の正体とは。

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豊洲の汚染土壌にもゼニが落ちていた?

「古い、狭い、危ないなあ」

 築地市場を視察した石原慎太郎元都知事がこう発言したのは、99年9月のことだった。それまで築地の再整備で進んでいた話は、この一言で豊洲への移転へと大きく舵を切ることになる。当初4000億円弱とされた新市場整備費は以降、野放図に膨張し始めることになった。再整備より新しい施設を作る方が金はかかるのは当然だ。

 豊洲では4施設の建設と3区画の土壌汚染対策工事が計画された。そのうち水産仲卸売場棟など主要3施設の最初の入札が、2013年11月に行われる。

「ここで大変な事態が起こりました。都の場合は国と違い、事前に予定価格を公開します。その合計額は628億円でしたが、1社も入札がなかったのです」

 と、都庁関係者。

「担当部局が慌ててゼネコンからヒアリングを行いました。皆一様に“そんな値段では割に合わない”と言う。やむを得ず、翌年2月、予定価格を1035億円にまで引き上げ、再入札を行いました。大幅譲歩です」

 今度はこの3施設の入札に、大手ゼネコンを筆頭にした3つの共同企業体(JV)が応札した。もっとも、各々の工事に、1つのJVしか参加せず、競争原理は働かなかった。

「談合が行われていることは疑いようがない。応札率も99・95~99・79%で、高い出費になりました」(同)

 結局、建設費は当初の990億円から、2747億円に拡大しているのが現状だ。これについて建築エコノミストの森山高至氏は、

「結局、一番金のかからないのは、築地の再整備。安ければ5~600億円、高くても1000億円程度で済んだと私は見ています」

■石原都知事─鹿島ライン

 都政担当記者は、

「ゼネコンは建物だけではなく、3区画の土壌汚染対策でも儲けています。この3区画の工事を落札した全てのJVに参加していたのは、鹿島と大成建設です」

 両社は各々、建物工事も落札したから、4つの工事を受注したことになる。

「鹿島と聞いて、すぐにピンとくるのが石原さんとの濃密な関係です」

 と声を潜めるのは、都庁の元幹部だ。

「鹿島には、石原さんと同じ一橋大学出身で、入社後すぐに休職して彼の公設秘書となった人物がいる。その後、鹿島に戻ると、営業畑で出世を重ね、今では専務執行役員を務めています」

 2002年、この人物の名前が都庁でクローズアップされることになった。

「知事だった石原さんが、秋葉原駅前の都有地払い下げによる『ITセンタービル』の建設をぶち上げた。このコンペには13社・グループが申し込みをしたが、プレゼンの準備期間が約50日間と短かった。そのため、実際の応札は鹿島のグループだけでした。石原さんと元秘書とのラインで、鹿島は事前に情報が取れていたからだと囁かれたものです」(同)

 豊洲での受注との関係も勘ぐられるのは致し方あるまい。一方、森山氏は、

「私は一番得をしたのは、東京ガスだと思います。もともと持っていた土地をノーリスクで売っただけですから。しかも土地交換で代替地も得られた」

 その汚染なき土地で、東京ガスは再開発でも進めているのだろうか。

「グラウンドにはゼニが落ちている」

 金が欲しければ、人一倍練習しろと選手を鼓舞したのは、南海ホークスの黄金時代を築いた名伯楽、鶴岡一人元監督である。石原元知事、ゼネコン、東京ガス……。彼らは「豊洲の荒地には大枚が落ちている」ことを知っていたのだろう。

「特集 嘘とペテンで盛り土した『豊洲と五輪』7問答」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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