豊洲移転用地、都と東京ガスで“交換”されていた 非難を避けるため?

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「1+1=2」ではない世界。例えば相性の良いパートナーが力を併せれば、2人の仕事の成果は3にも4にもなる。現実社会ではよくある現象を、数学の世界では非線形関係と呼ぶ。近年、こうした非線形を数学的に表現する「数理モデル」の研究が盛んに行われているという。翻って、豊洲の移転用地である。主たる地権者、東京ガスの売り値が535億円だというのに、東京都の取得費用が約1860億円に化けた不思議は、いかなる数理モデルで解き明かされるのか。

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 移転に必要だった40ヘクタールの土地のすべてを都が東京ガスから購入したと誤解している方も多いかもしれないので、まずその点を確認したい。

 都が東京ガスから売買で得た土地は10・5ヘクタールで、購入額は535億円だった。その他の内訳は、

・東京鉄鋼埠頭から270億円分
・東京電力から17億円分
・国から1億円分
・東京都都市整備局から450億円分
・東京都港湾局から585億円分

 これを見ると、東京ガス分は全体の3分の1から4分の1だったことになる。

 ところでこの内訳を見て、おかしな点に気づいた方もいるだろう。豊洲移転事業のため、東京都が東京都から土地を買っているのだ。一体どういうわけなのか。

「費用のうちの1035億円は、都が、都市整備局と港湾局の管理していた都有地を買い取った金額です。東京都中央卸売市場の会計として予算計上され、両局に支払われました」

 とは、都政担当記者だ。

「同じ都の中でのこととは言え、土地の管理は、それを使う事業主が行わないといけない。この場合は中央卸売市場ですから、所管替えが必要になる。これを有償所管替えと呼びます。同じ役所内で行われたため、ややこしいけど、違法でも何でもなく当然の手続きです」

■隠されていたギミック

 この点、元宮城県知事の浅野史郎・神奈川大学特別招聘教授も、

「港湾局などの土地を、別の局が他の用途に使用するためには、買い上げないといけません。都全体の財政でいうと、プラスでもマイナスでもない」

 土地の大半はそもそも都有地で、外部への実質的な支出は1035億円を除いた825億円だった?

 もっとも、これにはカラクリがあるという。先の都政担当記者が解説するには、

「東京ガスは、92ヘクタールの広さの豊洲地区に約50ヘクタールもの土地を所有する最大の地主でした。新市場の予定地の大半も、元は東京ガスの持ち物だったんです。一方で豊洲には、都の港湾局や都市整備局もまとまった土地を持っていた。それを2001年の土地区画整理事業によって都は東京ガスの土地と等価交換したのです」

 つまり、今回の用地取得で都の中央卸売市場が都市整備局や港湾局から購入した土地、計1035億円分は、元々はやはり東京ガスのものだったのだ。この汚れた土地を得るため、東京都は港湾局などが所有していた綺麗な土地を差し出していたわけである。

「この土地区画整理事業というプロセスを経ることにこそ仕掛けがあった筈です」

 と分析するのは、日本共産党都議団の曽根はじめ副団長である。

「都は相場より高値で東京ガスの汚染された土地を買うことが、都民や野党などから問題視されると恐れていた。非難を避けるため、売買契約の金額は極力減少させたいので、事前に土地交換を大規模に行っていた可能性がある。恣意的にこのプロセスを噛ませ、取得費用を実態より小さく見せかけ、カムフラージュする意図があったのではないかと見ています。ゆりかもめの豊洲駅周辺の土地は都市整備局のものでしたが、今ではその一等地は東京ガスのものになっているのでは」

 都と東京ガスはウィンウィンの関係。税金を好き勝手に使われる都民は、そのギミックに翻弄され続けているわけだ。

「特集 嘘とペテンで盛り土した『豊洲と五輪』7問答」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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