なぜ豊洲で基準超のベンゼンが 小池都知事の“見事な”勝負勘

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小池百合子都知事

 まさに予想的中。結果の良し悪しは別として、小池百合子都知事の頬は、さぞや緩んだに違いない。なにしろ、築地市場の豊洲移転に「待った!」を掛けて1カ月、今度は基準値を超す有害物質が検出されたのだから……。だが、そもそも基準値オーバーは、それほど危険なものなのか。慌てふためくのも、ちょっと待った!

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 市場棟の地下に溜まる水から、有害物質が検出されたと騒がれたのは、つい先日のこと。もっとも、いずれも基準値内(1リットルあたり、0・01ミリグラム)の数値で、安全性に問題ないとされていた。が、9月29日の東京都の発表によれば、地下6~10メートルほど掘り下げた201本ある地下水モニタリング井戸のうち3カ所から、基準値をわずかに超す「ベンゼン」(最大0・014ミリグラム)と「ヒ素」(0・019ミリグラム)が検出されたというのだ。小池都知事はそのことを受けて、

〈急いで移転することに待ったを掛けたのは、こういうことが起こるのではないかという不安があったから〉

 と鼻高々だ。過去7回の検査では未検出にもかかわらず、移転延期の大勝負に打って出た挙句に引き当てるとは、見事な勝負勘。「それ見たことか」とでも言わんばかりなのである。

 日本共産党都議団の曽根はじめ副団長も、

「タイミングがいいと言えば、確かにその通りです。選挙の際にも、一旦、立ち止まって考えるというのを公約にしていたので、事前に豊洲にはなにかあると読んでいたのかもしれません。ただ、盛り土問題に関する責任の所在について、結局、判らなかったという結論を出したことは残念ですし、時期を急いで幕引きを図ったのは、適切でなかったと思います。ですが、知事本人もまだ追及が必要と言っていますし、これからも豊洲の問題を徹底的に調査してくれると期待しています」

 と思いを寄せる。都議会で、小池旋風にさらなる追い風が吹きそうな勢いだが、

「今回、検出された濃度では、まず問題はないと言えます」

 と解説するのは、京都大大学院(工学研究科都市環境工学専攻)の米田稔教授である。

「地下水の環境基準は、1日当たり2リットルずつ70年間摂取し続けた場合を前提に、健康リスクの被害を考慮して定められたものです。仮に今回のレベルで豊洲市場の運営が始まったとしても、地下水を飲用したり、魚や果物を洗ったりするわけではありませんから、健康に影響が出ることはないでしょう」

■雨が水位を

 有害物質が気化して出てくるケースも考えられる。建物の中にガスが上ってきたとなれば、その空間にどのくらい滞在するかによって話は変ってくるが、少なくとも今回は屋外。その場合、この程度の濃度では盛り土などを通る間に薄まり、地表に出る時点では大気と同じレベルになっているという。

 では、なぜ、過去7回のモニタリングで検出されなかったのが、ここへきて急に基準値を上回ってしまったのか。その点については、

「このところ続いていた雨で、地下水の水位が上がっていたことが、要因の一つだと思われます。おそらく、盛り土の下にある砕石層などに濃度の高い箇所があり、地下水の水位が上がったことで、汚染物質が地下水に溶け出したのではないでしょうか。ただ、今は稼働させていない地下水管理システムを動かし、水位の上昇を抑えるようになれば、今回のような数値も出なくなるかもしれません」

 恐れるべきは、異常ともいえる、今年の気象条件をも味方に付けた小池都知事の強運か。

「特集 嘘とペテンで盛り土した『豊洲と五輪』7問答」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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