コーヒーor緑茶、コーラorダイエットコーラ 飲むなら? ドクター秋津がジャッジ! 健康長寿の新常識
総合内科医、秋津壽男医師(62)
気鋭の総合内科医、秋津壽男(としお)医師(62)が問う、医療の新常識。健康面での選択が、その人の寿命を左右する……となれば、普段何気なく口にする“飲み物”にも気をつけたい。
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次で設問も8項目めとなります。そろそろティーブレイクで一服したくなったのではないですか。そんな時、皆さんはコーヒーにしますか、それとも緑茶派?
■【Q8「肝がん」「糖尿病」「動脈硬化」予防! コーヒーと緑茶「エビデンスあり」はどっちだ】
コーヒーブレイクはブラックで
飲みすぎると、カフェインの刺激が強く、胃潰瘍になる──。かつてコーヒーは悪者扱いされていました。その一方、緑茶については、カテキンが体によく、たくさん飲む人は、がんに罹りにくいと言われてきました。
ところが、近年では、コーヒーの方に様々な病気の予防効果が認められ始めています。例えば、10年ほど前、オランダの研究グループが1万7000人を追跡調査したところ、コーヒーを1日7杯以上飲む人は、2杯までしか飲まない人と比べ、糖尿病に罹る割合が50%も低いことが判明したのです。その後、同様の報告はアメリカ、フィンランド、スウェーデン、日本の研究機関からもなされています。
コーヒーには、他にも動脈硬化やがんの予防効果もあると評価されています。厚労省の調査では、コーヒーを常飲する人は、肝がんの発症リスクが50%、女性の場合、大腸がんの発症リスクが30%も低いことが分かりました。
おそらく緑茶にも同じような効能があると思うのですが、まだなかなか良いデータが得られていません。
多くの機関で緑茶の健康性を証明しようとする研究調査が精力的に行われていますが、これといった数値が出ない中、先にコーヒーの方にエビデンス(証拠)が見つかったというわけです。
ネットで「エビデンスの評価─国立がん研究センター予防研究グループ」というサイトを見てください。ここでは様々な食材や嗜好品ががんに与える影響について、紹介しています。例えば「喫煙」なら全てのがんでリスクが上昇。「果物」が食道がんのリスクを下げることは「ほぼ確実」と認定している。
では「緑茶」を見てみましょう。どの部位のがんでも大半が「データ不十分」で、「可能性あり」としたのは女性の胃がんリスク減少だけです。一方の「コーヒー」は、肝がんリスク減少が「ほぼ確実」と評価され、子宮体(内膜)がんリスクの減少も「可能性あり」としています。
さらに国立がん研究センターは、コーヒー摂取と病気の関係性を解明すべく、長期間にわたる大規模追跡調査を実施しました。その結果をまとめたのが、2つの棒グラフ(図1)です。ご覧いただければ、がんのみならず、循環器系の疾病による死亡リスクを下げる効果の大きさも一目瞭然で理解できます。
図1:コーヒー摂取量と肝がんの発生率との関連(男女計)・コーヒー摂取と死因別死亡リスク
上のグラフは1990年から約10年かけ、日本各地の40~69歳の男女約9万人を追跡調査した結果です。毎日5杯以上、コーヒーを愛飲する人は、ほとんど飲まない人に比べ、肝がんの発症リスクが実に76%も低減し、4分の1になっていました。
一方、下は同じく9万人を、90年から21年間にわたり追跡調査したもの。1日3~4杯、コーヒーを楽しむ人は、ほとんど飲まない人と比較し、心筋梗塞などの心疾患による死亡リスクが36%、脳梗塞など脳血管疾患による死亡リスクは43%も下がっていたのです。
それでは、コーヒーの何が有効に働いているのでしょうか。最近、注目を集めているのは、コーヒーの黒い色素成分、「クロロゲン酸」というポリフェノールです。このクロロゲン酸には血糖値を改善する作用があります。これによって、糖尿病予防となるばかりか、血圧を調整する効果も期待できる。だから循環器系の疾病による死亡リスクが下がるのです。また抗酸化物質であるクロロゲン酸には強い抗炎症作用があり、肝炎の進行を防ぐことでがん化を抑制しているのではないかと考えられています。
またこれまで悪評ふんぷんだったカフェインにも、血管内皮の機能を改善する効果があることが分かってきました。これによってさらに心疾患や脳卒中の発生リスクを低減させている可能性が高いのです。
コーヒーは苦手だが、炭酸飲料は大好き、なかでもコーラはやめられないという人も多いのではないでしょうか。最近ではカロリーオフの商品もラインナップされています。そこでこの設問を挙げたい。
■【Q9 「コーラ」と「ダイエットコーラ」飲むならどっち?】
人工甘味料は大丈夫なのか?
カロリーゼロを謳うダイエット版コーラで使われている人工甘味料について、発がん性などの危険性を主張する人たちがいます。しかしまだ証拠はない。むしろここで私が警告したいのは、「偽物」の危険性です。疲労した時に大福やチョコレートといった甘いものを摂取すれば、体は回復します。それは糖分が本物だからです。ところが、身体が甘いものを欲しがっている時に「ダイエットコーラ」を飲んでも効果がありません。舌は騙されて甘味を感じますが、脳や身体は満たされないのです。すると本能的に、糖への欲求は強まります。ますます糖質に依存するようになる。人工甘味料にしてまでコーラを飲みたいという人は、結局は、甘いものを食べる習慣が抜けていません。その結果、「ダイエットコーラ」を飲みながら、ドーナツを2個食べてしまうような状況に陥りかねない。それなら最初から砂糖などが入ったコーラを飲んでいれば、ドーナツは必要なかったかもしれないのです。
特集「『ドクター秋津』がジャッジ! 健康長寿の『新常識10』――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)」より