上野動物園の象が妊娠 128年の歴史で初

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 かつて、武田鉄矢が主演した映画「子象物語」の副題は、“地上に降りた天使”だが、上野動物園では、このほど、1888年の飼育開始以来の念願が叶って、象が初めての妊娠。“天使”の誕生に向けて、あと、もう一歩なのである。

子象は100キロほどで生まれるそう(イメージ)

 今回、妊娠したのは、18歳のアジアゾウ、ウタイ。お相手は、同じ上野動物園で飼育されているアティ19歳で、ともに、02年、敬宮愛子さまの誕生を祝して、タイ王室から日本国民に贈られた象たちだ。

 恩賜上野動物園教育普及課の金子美香子課長が言う。

「パンダの発情は年に一度ですが、象は約20週間隔です。普段は、オスとメスで分離して飼育していますが、メスが発情すると、まずは柵越しに“お見合い”をします。そこで、息が合うと同居させるのです」

 今回の妊娠は、昨年10月。ウタイが発情し、交尾を行うと、その後、血中のホルモン値に妊娠の兆候が。さらに、今年7月に超音波画像で胎児の姿が確認された。

 それにしても、国内を代表する上野動物園で、象の繁殖が初だとは意外である。実は、アジアゾウは飼育管理下での繁殖が、国内でも10頭しか誕生例がないほど、世界的に見ても極めて難しい。というのも、

「牛などの家畜でしたら、人工妊娠が一般ですが、象は精液を採るのも、大きいゆえに困難なのです。麻酔をかけるにしても、長く眠らせると呼吸不全で死んでしまいかねないからです」(同)

 そのためには、頑張って交尾に励んでもらうしかないのだが、

「やはり、象にも相性というのが、あるようなんですね。これまでも長らく繁殖を試みてきたんですが、発情して同居させても、相性が悪いと、マウントできなかったり、交尾まで行かないケースもあるのです」(同)

 妊娠しても、死産ということだってある。油断はできないが、上手く行けば、来年夏には子象の誕生だ。妊娠期間も長いゾー。

週刊新潮 2016年9月29日号掲載

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