「ラジオ体操」と「ジムで筋トレ」どっちを選ぶべき? ドクター秋津がジャッジ! 健康長寿の新常識
総合内科医、秋津壽男医師(62)
「人生は選択の連続である」とはかのシェイクスピアの至言だ。人生において宝とも言うべき健康面でも、正しい選択を行えるか否かがその人の寿命を左右するという。気鋭の総合内科医、秋津壽男(としお)医師(62)が二者択一の設問で医療の新常識を問い、長寿への道を指し示す。
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古来、人は不老不死に憧れてきました。とりわけ権力者や大富豪はその思いが強い。永遠の命を追い求め、水銀を飲んだ秦の始皇帝しかり。中世では、死に瀕したローマ法王・インノケンティウス8世が、生命の復活を信じて少年3人の血液を飲み、そのまま息絶えました。
いくらお金をつぎ込んで長寿を希求しても、その方法が非常識であれば、命を縮めることになる。そこで、本稿では身近な生活習慣の中で健康長寿を目指すための最新の常識を読者の方々にお伝えしたいと思います。
毎年9月は「健康増進普及月間」です。「職場の健康診断実施強化月間」と位置付けられていますから、皆さんの会社でも、健診が実施されるところが多いのではないでしょうか。
年に1度の受診で充分に病気の予防、早期発見が期待できますが、問題は検査結果の活用法。これを間違えると、せっかくの健診も意味がなくなってしまう。そこで最初に皆さんに問いたいのが次の設問です。
■【Q1 健康診断「異常なし」と「要再検査」どっちが心配?】
検査結果が記された用紙を受け取ると、血圧、尿酸値、肝機能、血糖値、中性脂肪などの数値に一喜一憂する。「異常なし」に安堵し、「要再検査」や「要治療」には顔面蒼白となられているのではないでしょうか。
しかし、「現状の数値」を知るのも大事ですが、本当に重視すべきは、健康面での体の「経年変化」です。数年分の診断結果を見比べ、長期にわたる体の異変を察知することが重要なのです。
仮に今年の血糖値が正常の範囲内でも、去年と比べ大きく上昇していたり、5年前から増加の一途を辿っていたりすれば、その人には異常な数値と言えます。
また血圧が常に「正常」でも、年々、徐々に上がっているとしたら、生活習慣などに問題を抱えている可能性がある。数年のスパンで数値の変化を見ないと、身体が発している危険信号を見落とすことになります。
その逆もしかりです。肝機能の血液検査で「要再検査」と判定されてしまっても、過去の結果と比べ、「γ-GTP」などの数値が下降傾向にあれば、徒(いたずら)に不安に陥る必要はないでしょう。
かように今年の分だけ見て、「良かった」「悪かった」でお終いにするのではなく、経年変化にぜひとも留意して下さい。そのためには、健診を毎年受け続け、その結果をファイルにまとめて保存しておくことが肝要です。ところが、これを一読して捨ててしまったり、なくしてしまう方が実に多い。
基本的に健康診断の結果は、実施した医療機関や事業主に5年分しか保存の義務がなく、それ以上、古いものは再発行してもらえません。医師から的確な医療を受ける上でも、診察の際、過去の記録があるのとないのとでは雲泥の差となります。これほど貴重なデータは他に存在しないということを肝に銘じて下さい。
さて、こうした健康診断に近年、メタボリックシンドローム判定が採り入れられるようになりました。現在、40代男性の35%がメタボというデータもあります。
こうしたメタボ解消のため、ハードな筋トレに取り組む方もいます。もっとも、注意が必要なのは、「20代の女性が来月の結婚式でドレスを美しく着るための減量」と「中高年がメタボ対策のために行う体重管理」では、求められる運動量や負荷が異なるということ。そこで次に問いたいのは、
メタボ対策はジムに通わないとダメか?
■【Q2 物足りない「ラジオ体操」と「ジムで筋トレ」選ぶべきはどっち?】
ラジオ体操なんて、「お年寄りや夏休みの子供が行う軽い運動」というイメージが強いでしょう。物足りないと思う方も多いはずです。しかし実際にやってみると、これがなかなか大変で、40代以上の方は、体にきついと感じるかもしれません。
NHKで放送されているラジオ体操は運動量がうまく考えられていて、1曲やりきると、汗はかかないまでも、全身がほどよく温まっています。全身の筋肉をバランス良く使うように作られているからです。筋力を高める必要があるアスリートならともかく、一般の方がメタボ対策でわざわざ高いお金を払ってジムへ通い、運動量過剰な筋トレなどのプログラムをこなす必要はありません。
特集「『ドクター秋津』がジャッジ! 健康長寿の『新常識10』――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)」より