安倍官邸vs財務省の攻防 日銀の外債購入めぐり

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 官邸が禁断の果実に手を伸ばそうとしているのか。

 そんな憶測が広まったのは9月5日、外遊先の中国・杭州で行われた安倍総理の記者会見での一言からだった。総理番記者によると、

「昨今の円高基調がアベノミクスに与える影響について質問が出たときのことでした。『必要なときにはしっかりと対応する』と答えた後、『日本銀行による外債購入が、為替介入を目的とする場合は認められないと承知しています』と付け加えたのです」

 総理の言葉通り、日銀を始め、先進国の中央銀行が外債を買うことがご法度とされているのは金融界の常識。それをわざわざ説明したのは、総理のブレーンである浜田宏一内閣官房参与が先月30日のインタビューの中で、円高基調への対策として、「日銀の外債購入も選択肢のひとつ」と発言したのを受けてのことだった。

 経済アナリストの解説。

「相場は彼らの発言を織り込んで動くため、日銀が外債を購入するかどうかは問題ではありません。2人の発言の狙いは『日銀が外債を購入するかもしれない』という予測を市場に広め、その結果、現在の円高基調に楔(くさび)を打ち込むこと。いわゆる『口先介入』です」

 実際のところ、「安倍発言」後の為替相場は大きく動いてはいない。その一方、この一連の発言に神経質になっているのが、他ならぬ財務省である。担当記者が、

「官邸内での財務省の発言力が弱まる中、彼らが唯一持っている“切り札”が、為替介入なのです。でも、財務省が介入に打って出るのは、リーマンショック級の事件が起き、1ドル=90円台前半ぐらいに一気に円高に振れる緊急事態時のみ」

 とし、こう続ける。

「しかし、官邸は日経平均株価を支えるため、主要企業が想定している1ドル=100円台後半は維持したいという思惑がある。外債購入の権限を、官邸の傀儡となった日銀が持てば、財務省の立場はさらに弱まってしまうと、幹部連中は危機感を強めているのです」

 消費増税に加え、官邸と財務省の間に新たな攻防ラインができたというわけだ。

週刊新潮 2016年9月22日菊咲月増大号掲載

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