フィリピン大統領、ミンダナオ島テロに“強権発動”の懸念

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 政権発足2カ月で、殺害した麻薬犯罪容疑者は1000人超。クリント・イーストウッドの当たり役で職務のためには暴力も辞さないアウトロー刑事“ダーティハリー”にも擬せられるのは“フィリピンのトランプ”ことロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71)だ。

“ダーティハリー”なフィリピン(イメージ)

 容疑者段階で殺されるのではたまらないが、それを国連に非難されるや国連脱退を仄めかし、潘基文事務総長からの会談要求も断った2日、爆弾テロが大統領のお膝元で起こった。7期も市長を務めたミンダナオ島ダバオ市で死者14人を含む80人以上の死傷者が出た。同市に大統領が滞在中の出来事だった。

「〈イスラム国〉傘下のイスラム過激派組織〈アブサヤフ〉が犯行声明を出したとして大統領はすかさず“無法状態”を宣言。“戒厳令ではない”としつつも、これで憲法上、大統領は軍を治安出動させることができる。“強面”大統領の強権発動が懸念される一方、国連との軋轢がどこかに吹き飛んでしまった」(国際部記者)

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は言う。

「アブサヤフはミンダナオ島の南西にあるスールー諸島を根城に活動する数百人規模の組織。とはいえ実質は、営利誘拐を主な資金源とする犯罪集団です。6月にも、誘拐したカナダ人観光客から身代金を引き出せないと見るや斬首する事件を起こしています。今回の爆弾事件はスールー諸島に国軍が展開し、圧力が強まったことへの報復かもしれませんが、戦力差は歴然です」

 既に9000人の兵士が投入されているというものの、現代イスラム研究センターの宮田律氏は言う。

「ただし、イスラム国がシリアやイラクで劣勢となるやアフガニスタンに一部が展開したように、壊滅させなければ飛び火するのがテロ組織。アブサヤフはマレーシアやインドネシアに広がる東南アジアのテロネットワークとの関係が疑われており、拡散が心配です」

 麻薬にせよテロにせよ、強面大統領には“仁王立ち”を続けてもらおう。

週刊新潮 2016年9月15日号掲載

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